やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

パプアニューギニア国連の投票権を失う

パプアニューギニアが国連分担金不払いで国連の投票権を失った、というニュースである。 Papua New Guinea loses UN vote over unpaid annual contributions BY PAPUA NEW GUINEA CORRESPONDENT ERIC TLOZEK UPDATED FRI FEB 24 http://mobile.abc.net.au/ne…

人類の共同財産 Common Heritage of Mankind とは何か?

海洋法の本を読む中で出て来る人類の共同財産ー Common Heritage of Mankind (CHM) 田中則夫先生の『国際海洋法の現代的形成』第5章深海底の法的地位をめぐる国際法理論の検討で議論されているので、まとめてみたい。が、ムズカシ。(138−155頁) *CHMの概…

電気通信大学名誉教授小菅敏夫先生

右から小菅敏夫教授、田中正智教授、当方 90年代半ば。グアム大学のPEACESATにて 電気通信大学名誉教授小菅敏夫先生に20年ぶり位にお会いする機会を得た。 太平洋島嶼国の情報通信(ICT)政策で博士論文が通過したことをご報告させていただいた。 実は、小菅教…

ブルーボートニューカレドニアで拿捕

パラオやヤップに現れていたベトナムの違法漁船、通称ブルーボートが南半球のニューカレドニアまで来て、仏海軍に拿捕されたというニュース。 Pacific News Minute: Vietnamese “Blue Boats” Caught Fishing Illegally In New Caledonia, PNG By NEAL CONAN …

トランプ政権の対太平洋政策

トランプ政権の対太平洋政策、気になるところだ。 A new American president – a new agenda for our region? Rory Respicio Jan 25, 2017 https://www.postguam.com/forum/featured_columnists/a-new-american-president-a-new-agenda-for-our-region/artic…

『京都の一級品ー東山巡礼ー』竹山道雄(昭和40年新潮社)

竹山道雄の『昭和の精神史』を探していた時に見つけた本。 京都と奈良を案内した本である。 気持ちの余裕がある時に読もうと図書館で借りたのだが、余裕なんかいつまで経ってもできずに返却日が来たので一度返す事にした。もう本は買わないことしている。(…

訃報ートンガ、パプアニューギニア

Mata'aho王太后とOgio総督 トンガ国王Tupou VIのお母様、Halaevalu Mata'aho王太后がオークランドの病院で亡くなられた、との訃報。90歳。 Tributes paid after Tongan King's mother passes away in Auckland https://www.tvnz.co.nz/one-news/world/tribut…

「国家管轄圏外における海洋生物多様性ーその保全と利用」濱本正太郎

『国際法の実践』小松一郎大使追悼(信山社、2015年)に納められている「国家管轄圏外における海洋生物多様性ーその保全と利用」(濱本正太郎教授)をまとめたい。 議論は次の2つに焦点が当てられている。 一つは、MPAの法的適応性。もう一つは海洋遺伝資源…

『国際法の実践』小松一郎大使追悼、信山社、2015年

同志社大学、坂元教示からご教示いただいたもう一冊の本は『国際法の実践』小松一郎大使追悼(信山社、2015年)。 これも図書館になく、諭吉さん2人とお別れする事に。 小松一郎大使、もしかしてあの安保法案の内閣法制局長官?と先週やっと気づいた。 私の…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(6)

『国際海洋法の現代的形成』に納められている第9章「国家管轄権の限界を超える海域における生物多様性保全の課題」は3節までが、第8章「国際法における海洋保護区の意義」に書いてある事と重なっているようなので、4節の「国家管轄権の限界を超える海域…

勉強するということ

働きながら修士や博士に籍を置き勉強している。 通信政策、海洋政策は、我流の勉強には限界がある、と自分でやってわかっているからだ。 ところが「勉強が忙しく仕事なんかできなわね。」とか、「仕事しながら博論なんて書けないわね。」と、多分修論も博論…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(5)

第8章「国際法における海洋保護区の意義」のおわりにをまとめたい。(同書299−304頁) UNCLOSのEEZの制定は、伝統的な海洋自由の思想の位置づけを変更した最初の一般多数国条約であった。そしてMPAの主張は海洋自由の思想に対する批判を新たな形で反映した…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(4)

田中則夫著『国際海洋法の現代的形成』の第8章「国際法における海洋保護区の意義」を読んでいる。いよいよ3節の「公海における海洋保護区設定の動向」 議論の経緯が、あの米国海洋学者シルビア・アール女史の話から始まる。 田中先生は1992年のリオ・デ・…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(3)

田中先生の『国際海洋法の現代的形成』に納められている第8章「国際法における海洋保護区の意義」を読んでいる。 EEZ、公海のMPAが実質的に行われて来た例を一般多数国条約で紹介し、続いて下記の4つの地域条約と米国、豪州の例を紹介。 i 1992年の北東大…

京都の夏、打ち水、管轄権

管轄権ってなんであろう?とこの夏京都での経験を思いめぐらした。 暑い京都。一度でも温度を下げようと家の回りに打ち水をした。 玄関までは管轄内だが道路は管轄外。ちなみに西に走る道路は財務省の所有で年間数千円、使用料として払っている。 南に走る道…

太平洋とは日米関係なりー安倍総理の米国訪問

太平洋といえば日米関係。 日米関係といえば太平洋、なのである。 当然、トランプ政権の対太平洋政策は気になるところで、安倍総理の米国訪問をウェッブで追っていた。 トランプ大統領は神武を知っている! 日米首脳記者会見で、トランプ大統領が下記のコメ…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(2)

2節の海洋保護区の国際法的基盤では具体的条約を示し議論されている。 MPAを直接規律する一般多数国条約はないが、MPA設定に関係する同条約は存在する。 主な条約は下記の6本。 i 国際捕鯨取締条約(1946年12月2日署名、1948年11月10日発効) ii 南極制度…

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年(1)

同志社大学、坂元茂樹教授からご教示いただいた学術書である。 タカクてムズカしい!専門過ぎて図書館になかったので7人分の伊藤公とお別れしました。 『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著、東信堂、2015年 同書にある「第3部海洋生物多様性と海洋保護区…

メガ海洋保護区批判ーPierre Leenhardt

メガ海洋保護区に批判的学術論3本目は下記の「メガ海洋保護区は保護のため?地政学のため?」(意訳)というタイトルの記事である。2013年にOcean & Coastal Managementという雑誌に掲載。執筆者はPierre Leenhardt始め5名で、みなさん南フランスの地中海…

IUCNとは何か?

IUCNとは何かまだわからない、と下記ブログに書いたところ金子教授からさらに論文を送っていただいた。 「国際自然保護連合とワシントン条約 : 条約の運用に関するIUCN声明文の紹介」 IUCN's view on CITES treaty 金子 与止男著 森林野生動物研究会誌 = Jou…

「国家管轄外の海洋生物多様性に関する新協定」兼原敦子著、日本海洋政策学会誌

兼原敦子著「国家管轄外の海洋生物多様性に関する新協定」(日本海洋政策学会誌、第6号、2016) BBNJに関する論理的考察。難しいです!数日かけて読み込みましたがよくわかりませんでした。 BBNJ、現在国連で議論されている新しい海洋管理の枠組み。その理…

メガ海洋保護区批判 - by Davidson & Dulvy

メガ海洋保護区批判の2本目は鮫やエイの研究者による論文である。Nature Ecology & Evolutionからこの1月に出たばかりの論文。 Global marine protected areas to prevent extinctions Lindsay N. K. Davidson & Nicholas K. Dulvy http://www.nature.com/…

象牙問題を巡る岩手県立大学金子与止男教授の和文論文

金子与止男教授の論文表紙から 昨年の9月、IUCNの海洋保護区の議論を追っていたら同団体の象牙を巡るメディア情報が眼についた。象牙問題は自分の関心とは離れているが、そのイエロージャーナリズムにも見える報道のあり方が気になった。 色々検索していた…

メガ海洋保護区批判 - by Jones & Santo

広大なEEZや公海を海洋保護区にする事が、シルビアやクリスティーン等によって支持され、それが海洋政策の主流になっているのだろうか?と少々気落ちしていたが、しっかりと反対の意見が学術誌で議論されている。 芋ずる式に見つけた3つの論文を紹介したい…

沖縄ノート、軍命ではなかった集団自決

「海外事情」2016年10月号特集「安全保障と沖縄」に渡辺昭夫先生が「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」という小論を書かれ、以前紹介した。 そこに集団自決の話が出て来るが私は何も知らなかったのでそのままにしておいたらFBFの方が色々教えて…

チャゴス諸島メガ海洋保護区を巡る、脱植民地化・人権・英米の思惑、そしてウィキリークス

米軍基地のあるディエゴガルシア島 坂元教授の書かれた論文に、パラオの海洋保護区の問題に並んで訴訟が提起されたインド洋にあるチャゴス諸島の海洋保護区が紹介されている。 ここ数日ウェッブ検索しただけなのだが、メガ海洋保護区の実態を知る重要な情報…

海洋問題の勉強ーメガ海洋保護区

2008年にミクロネシアの海保案事業を立ち上げた時、それで自分の役割は終わりだろうと思っていた。情報通信政策で博士論文を書き出したばかりだったので、海洋問題を加えるのは自分の脳みその限界を超えていた。 それでも情報通信も海洋問題も太平洋島嶼国の…

マーシャル諸島に突然違法漁船入港!

何のライセンスもないフィリピンの漁船が突然マーシャル諸島に入港した、というニュース。 太平洋では当たり前、よくある話である。 79名の漁船員は船に戻され24時間マーシャル諸島の警察が見張っている。 また病人がいないかマーシャル諸島の病院関係者が船…

年間20億円でできる海洋国家日本の太平洋への貢献

水産庁取締船。以下3隻はWCPFCの公海監視船に登録され、既に太平洋での活動実績がある。よって現在までの経験をさらに拡大する可能性、効果、影響は大きい、と当方は考えている。 東光丸 86.90m 白竜丸 84.22m 照洋丸 87.60m <海上保安庁が出て来れない!…

トランプ大統領が電話切ったナウル、マヌスの難民センター案件

トランプの難民政策でSNSは賑わっている。 米国政治も難民問題もよくわからないので傍観しているが、豪州のターンブル首相との電話会談でトランプ大統領が電話を切ったというニュースはこのブログに書いておきたい。 太平洋島嶼国のナウルとパプアニューギニ…