やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『頭山満伝』ー 黒龍会は今でいえばシンクタンク?

井川聡著『頭山満伝』残りの5章を読み進めた。肝心の大アジア主義を理解できるかもしれない、という期待を思って。しかしやはり読めば読むほどわからなくなる玄洋社と頭山満。そして黒龍会なのだ。 8章で孫の頭山興助氏が同様に指摘ていた。やはりそうなの…

「日ソ漁業条約の成立」

「日ソ漁業条約の成立」p. 133-149 日ソ漁業条約は国際政治の分野でも論文があって一度読もうと思ったがそのままである。 小田論文がここでも、日米加北太平洋漁業条約、日中民間漁業協定に並んで、日本が締約国の公海自由の蹂躙を自ら是認したものである、…

日中民間漁業協定の成立

ビキニ水爆実験の国際法的議論に関心を持ってなんとなく手にした、小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)。他の章も面白く読み進めている。 「日中民間漁業協定の成立」戦後間もない、1950年代の日中間の海洋問題、特に漁業問題を扱った小論だが、これ…

PTSD(心的外傷後ストレス障害)にしてはいけないこと。。。

以前から日本語にしたかったPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えた人にしてはいけないこと。。。 私が笹川平和財団で受けたハラスメント、暴力は恐ろしいものだった。そのことを言うと「忘れろ」「あなたにも責任が、」などと言われてきた。その内、様々な形…

『頭山満伝』ー 日本の取るべき道は国権拡充

読めば読むほどわからなくなる玄洋社と頭山満。 『頭山満伝』を読み進めている。読み出すと眠れなくなるので昼間読むことにするほど面白い。 第3章「一人でも淋しくない」にはさらに多くの登場人物が出て来て、しかも右左と入り乱れ、何が何だかわからない…

もう一つの9条 ー 「公海漁業の規制」

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)の第3章は「公海漁業の規制」。 海洋漁業の国際的規制について 日中民間漁業協定の成立 日ソ漁業条約の成立 の3節から構成されている。 「海洋漁業の国際的規制について」では、現在の排他的経済水域の200海里…

「李承晩ラインの違法性」- 小田滋『海洋の国際法構造』より

引き続き、 小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)を読んでいる。第2章領海制度の構造の2つ目の論文は「李承晩ラインの違法性」だ。竹島問題にも連なる話である。 一番興味深かったのが一方的公海への拡大を、韓国だけでなく、ラテン・アメリカ諸国も…

民権運動と勤皇とー『頭山満伝』

井川聡著『頭山満伝』の第2章「玄洋社起つ」 玄洋社は社会が大きく変わる不安定な時期の血気盛んな青年達を束ねる、今で言うNGOのようなものであったのかもしれない。 玄洋社の三憲則 一に勤皇、二に愛国、三に人民主権 勤皇と人民主権は矛盾しないのだ。そ…

頭山満は女性が育てたー『頭山満伝』

安倍政権の「インド太平洋戦略」を調べているうちに地政学者のカール・ハウスホーファーにぶつかった。ハウスホーファーは後藤新平と会ってる。後藤新平といえば「大アジア主義」。その原点を探っていたら頭山満の玄洋社、後藤の義父安場保和、横井小楠と繋…

人種 ー 国際法学と生物学の溝?

フランス憲法から「人種」という言葉が削除されることいになることを周囲に話したら「ヒドイ!」という反応で面喰らっている。 それよりも現在勉強中の国際法だ。院生ですら「人種」という言葉自体が科学的根拠がないことを知らない。怖くて教授には聞けない…

領海制度の構造 ー 小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956) 1954年のビキニ水爆実験の国際法的な議論がされているので手に取った本だが他の章も興味深く、というか海洋法を学ぶ上で基本的な議論として知っておくべき内容だと思われるので、そのまま読み進めている。 第2…

現在の海洋法の原点は日本の漁業?

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956)の第1章は公海の自由。 ここに衝撃的な数字があった。戦後日本漁船が韓国、中国、ソ連に拿捕された数だ。P. 6−7 1955年までに韓国に拿捕された日本漁船は213隻、乗組員2769名 1954年までに中共政府に拿捕された…

30億円の基金を任されて(9)

30億円の基金を任されて ー 昨年入学した同志社大学の法学研究科で自分の子供ような学生さんたちから仕事のこと聞かれて書き出したブログのテーマ。笹川平和財団の愚痴ばかりになっている。それでも控え目に書いている。もっとすごい状況だったのです! とこ…

浦辺登『玄洋社とは何者か』(弦書房、2017年)

浦辺登『玄洋社とは何者か』(弦書房、2017年) ハウスホーファーのインド太平洋を読んでいると、日本からの影響が大きい事がわかる。が実際にどのような影響があったのか?ハウスホーファーは日本で後藤新平に会っている。であれば後藤新平の地政学に影響を…

ビキニ水爆実験は「自由世界」の「安全」のため

10. ビキニ水爆実験をめぐるマクドーガル氏の理論p.250-266 第5章「公開における水爆実験」、小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956) 1954年3月のビキニ水爆実験については日本国内で多くの議論があったが、翌年1955年から外国の論文も増えてきた。日…

ビキニ水爆実験は合法

小田滋『海洋の国際法構造』(有信堂、1956) 田中則夫先生先生の海洋法の本に、公海での核実験、ビキニ島について国際法の議論があるというので手に取った。本が出版されたのが、ビキニ島核実験1954年(昭和29年)の2年後ということもあり、国際法の議論だ…

マルタと海洋秩序、そして北朝鮮

www.jiji.com マルタのムスカット首相が来日。安倍総理と海洋秩序について会談したとのニュース。 マルタと言えば、北朝鮮、マネーロンダリング、便宜置籍船ビジネスと「法の支配に基く海洋秩序」という言葉に違和感を覚えてしまう国家だ。怪しい主権ビジネ…

皇太子殿下の瀬戸内海研究

厳島と広島を訪ねた。 瀬戸内海の海をみていたら皇太子殿下の研究を思い出して読みたくなった。日本人はこういう方を天皇に迎える幸運を感謝すべきだ。私も博士となったので皇太子殿下のご研究を評価させていただく事も許されるであろうか。 研究資料に対す…