やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ハンナ・アレント『革命について』(1)

自決権の歴史的背景をフランス革命あたりから書くべきか、となんとく思っていて、そうであればアメリカ革命も若干触れた方が、少なくとも知っておかないと、と悩み。そもそもアメリカ史を知らない、と改めて反省。 何気に聴講した阿川尚之教授のゼミはアメリ…

第一次世界大戦に日本は割って入ったのか?

京大の奈良岡教授が「第一次世界大戦に日本は割って入った」と主張され未だにショックを受けている。私の第一次世界大戦の理解は平間洋一先生の論文の依拠している。 なかなか難しく、複雑な議論だが「割って入った」と一言では片付けられないような気がして…

矢内原忠雄「南洋群島の研究」と歴史教科書執筆

高校生の歴史教科書書き直し。ボディの部分が学術書みたいで高校生には難しい,ということで話題を変えることに。あまり世の中に明かしていけないらしいので詳細は書きません。 関連資料をここ数日読み返した。 矢内原忠雄の「南洋群島の研究」は植民が悪い…

太平洋島嶼国バヌアツの中国化 ー 剥奪される正義と報道の自由

太平洋島嶼国の中国化、言論統制は港湾支援を装って軍事基地化する動きよりも、ある意味恐ろしい。 中国人に4千冊の旅券を販売するバヌアツ。その収入は国家予算の3分の1を占めている。この仕組みは同国の法秩序も崩壊させ、報道の自由を圧迫する結果に。…

『法学の世界』読書メモ その2

法学とは何か?法律とは何か?国際法で博士論文を書くとはどういうことか? 学部生のために書かれた導入書『法学の世界』を紹介してくれた法哲学者に感謝したい。シンプルな故に奥深いく、色々考えさせられるのだ。 第一章は憲法につづいて民法、刑法が続き…

ロシア中国が反対する「南極の海洋生物資源の保存」

外国メディアは環境派受けする本件をかなり記事にしています。 「南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)第38回 年次会合」の結果について:水産庁 先日南極管理に関する重要な会議が終了した。 水産庁の上記発表では詳細がわからないので問い合…

ソロモン諸島の動きーブログリスト 12.05 updated

2019年9月16日のソロモン諸島台湾断交から動きを追っている。さっきブログをみたら結構書いていたので自分でもびっくり。 リストを作っておきたい。 まずはソロモン諸島の基本をどうぞ! <断交後> yashinominews.hatenablog.com <断交前の動きも多…

ソロモン諸島台湾断交 チャールズ皇太子動く (2019.10.29-11.2)

9月16日、突然のソロモン諸島台湾断交から早くも2月近くが経った。同じく台湾断交に踏み切ったキリバスの方も豪州メディアを追い出す等動きがあるが、ソロモン諸島はインド太平洋研究会での内藤先生の講演会もあったので引き続きフォローしている。 一番…

海洋国家日本、水産大国日本

魚がいなくなるというアジテーションに乗せられて、最初に読み始めたのが勝川さんという若い研究者のレポート。わかりやすくすんなり納得できる内容だった。しかも彼は政治家に働きかけ、象牙の塔ではなく現場で活躍し眩しく見えたものだ。 その内、水産の専…

「植民」を悪者にしたフルシチョフとレーニン(未完)

1960年国連総会でのフルシチョフ。靴が有名だが実際に靴は持っていなかった。 1960年国連総会のフルシチョフ演説とそれを支えるレーニンのイデオロギー、レトリック、アジテーション。これこそ1514決議、植民地独立付与宣言(Declaration on the Granting of…

島嶼国の誕生と自決権、そしてレーニン・フルシチョフ

2つ目の博論では太平洋島嶼国の誕生を促した自決権を、島嶼国に関連する部分に絞って理論枠組の中で議論する予定だ。 一番重要なのが1960年の国連決議1514と1541。この決議を導いたのがフルシチョフの演説である、という議論はほぼない。1995年のカッセーゼ…

ハドソン研究所長尾博士のポンペオ演説解説

長尾博士のベトナム語の解説 ハドソン研究所でのポンペオ長官の演説 ウィルソンセンターのペンス副大統領の中国批判は日本でもかなり取り上げられたがハドソン研究所でのポンペオ国務長官のペンス演説に畳み掛けるような中国批判はそれほど取り上げられてい…

アリストテレスの海老捨てモロジー ー インテリジェンス講座その5

epistemplogyが覚えられず、 海老捨てモロジー で覚えた。 インテリジェンスの基本。認識論。 これは博論書いている時にメソドロジーの一環で学びました。同時に相国寺で悟りました。 群盲象をなでる。 あれを勘違いしている人は多いのではないか?以下のよ…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(7)

第二章 5つの政治的表現 ー 民族・階級・少数民族・人種・エスニック ー の最後の3つの節。これが一番ローネンが議論したい箇所なのであろう。ローネンはホロコーストを生き残り、キブツで暮らし、その後アフリカに入っている。どこかに彼のより詳細な経歴…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(6)

引き続き第二章の1節「民族の自決」 ナショナリズムとエスニックの違いが議論されている。 自決がナショナリズムの追求という形で議論されているがそれは下記のような例を示す。 脱植民地化(民族によってではなく植民地遺産によって) 自治の運動(必ずし…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(5)

第二章 5つの政治的表現 ー 民族・階級・少数民族・人種・エスニック ー ローネンの自決権のカテゴリーはわかりやすい。この5つの分類を見ていると何が抜けていて、私が太平洋島嶼国について議論したいどの部分が抜けているのが浮かび上がってくるのだ。 …

パラオ現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補は中国支持!

パラオ現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補は中国支持! レメンゲサウ大統領が台湾支持といいながら、実は中国にべったりであることは各方面から聞いていた。中立を装ってきた現副大統領兼法務大臣、次期大統領選候補のOilouch氏がここに来て中国支持で…

カッセーゼによるレーリンクの思い出と評価

Cassese, Antonio 2010. “B. V. A. Röling - A Personal Recollection and Appraisal,” Journal of International Criminal Justice 8 アントニオ・カッセーゼが亡くなる前年に出されたペーパーを読んだ。カッセーゼは、東京裁判の判事であったオランダレー…

Antonio Cassese とB. V. A. Röling

国際法の巨人、大家 Antonio Casseseの自決権の議論を読んでいるのだが、江崎先生から東京裁判と彼の関係を指摘され、チラッと読んだこのペーパー。著者金碩淵は韓国の研究者だ。 「「東京裁判史観」の廃棄を訴える「右翼」の場合、「勝者の裁き」論を繰り返…

『法学の世界』読書メモ

法学とは何か?法律とは何か?国際法で博士論文を書くとはどういうことか? そんな基本的な疑問はずっとあったのだが、ある法哲学者から学部生が読む本を紹介いただいた。はっとするようなことが書かれている。 例えば第1章の憲法。私も長年憲法とは憲法典…

十七条憲法の十二条が支える皇室

天皇陛下の即位式に関連し誰も取り上げていない十七条憲法の十二条。 「国に二君なく、民に両主はない、国の内の人々は、唯一人の天皇を唯一の主人とみとめると。」 私は新渡戸稲造の『日本-その問題と発展の諸局面』を読んでメモをこのブログに書いた。き…

ソロモン諸島台湾断交 法律が守ったツラギ島

中国企業がソロモン諸島の中央部州政府と島ごと長期リース契約を結んだ件で、かなりニュースになっていたが、同国の法務長官が違法な契約ですぐに終了しなければならない、と首相官邸を通じて、同州に通告。法律万歳! TULAGI LEASE ILLEGAL - Solomon Star …

パラダイス行きのパスポート

How selling citizenship is now big business - BBC News BBCがバヌアツパスポート販売の記事を書いた。私が書いてきて、BBCが書いていないことがある。バヌアツのような法手続きが緩い国は犯罪者にも容易にパスポートが手に入る。そのパスポートで世界中で…

ヤップからの恐喝、受けました。

yashinominews.hatenablog.com 昨日あげたヤップの米国人司法長官代理殺害事件に関する記事をヤップのFBが取り上げて、恐喝のようなメッセージが来ている。 ああ、これが彼女が受けた脅しなのだと実感した。ちなみに私は、罪や汚職を指摘したがヤップやヤッ…

ダブ・ローネン『自決権とは何か』ナショナリズムからエスニック紛争へ(4)

4ヶ月前に手にしたダブ・ローネン『自決権とは何か』の読書メモ再開。 自決権について非常にわかりやすく、また刺激的にまとめられている。アマゾンで見たら50円売っていたので購入。 鉛筆握りながら再読。 著者ローネンの経歴があったのでコピーしておく。…

アメリカの本気(2)

アメリカの本気が加速している。トップギアで、だ。 まずは2019年10月にハワイの東西センターで開催されたミクロネシアリーダー会議でインド太平洋軍のPhil Davidson司令官がスピーチ。 支援策は色々あるがインド太平洋トランスペアレンシーに15億円を追加支…

アメリカの本気(1)

2010年1月、ヒラリー・クリントン国務長官の時代にもアメリカの太平洋回帰が叫ばれたのだ。しかし国務長官がケチャップ屋の父ちゃんになった途端、アップルの元副社長を国務事務次官補に任命し、わけのわからないOur Oceanという海洋保護事業になってしまっ…

Heart of Darkness of Island Society

www.rnz.co.nz Heart of Darkness of Island Society The murder of Ms Rachelle Bergeron has occupied my mind since the 15th October when the news showed up on SNS. In my 30 years experience of working in the Pacific Islands, I have always fel…

クアルテイ前パラオ国務大臣、旭日大綬章受章

令和元年春の外国人叙勲で旭日大綬章を受章されたクアルテイ前国務大臣への勲章伝達式(在パラオ日本大使館から) この度の日本海上自衛隊パラオ訪問にもつながる日本とパラオの関係を強化したクアルテイ前パラオ国務大臣。令和元年春の外国人叙勲で旭日大綬…

海上自衛隊・航空自衛隊パラオにて慰霊

私はパラオに30年以上関与し、この自衛隊がやってくる道筋を2008年に作ったのです。 一つのきっかけが太平洋軍キーティング司令官の言葉でした。 「この広い太平洋を守れるのは米国と日本しかいない。しかし日本の手足を縛ったのは我々米国だ。」 ならばそ…