やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

プリンセス あしか号 沈没調査委員会報告書(その2)

プリンセス あしか号 沈没調査委員会報告書(その2)

600頁に及ぶ報告は74名の犠牲者が事故ではなく、殺されたのではないかと疑ってしまうようなスキャンダラスな内容でした。飛ばし飛ばし読んだため正確性に自信がありませんが下記が主な内容です。

* 今回の事故で辞任した前運輸大臣はアシカ号の安全性の確認をせずに嘘の報告をしていた。

* トンガの船舶会社もアシカ号が航行不可能な状況であることを知っていて運行させた。

ニュージーランドの新聞はアシカ号の前オーナーが、トンガ首相のクラスメイトで古い友人であると書いているが首相は否定している。

* 事故後、船舶専門家の評価では、アシカ号はスクラップにしても0円か赤字になる価値しかなかったと判断された。しかしトンガ政府は600,000フィジードルを支払って購入していた。

* 購入費用に関してはニュージーランドODAが検討されたが、安全性が確認できず却下。中国のODAを当てることが検討された。(実際にどの予算が使用されたかは記述されていない。)

* 本来、大蔵大臣の承認が必要な書類を偽造し運輸省のみの判断で購入。

* 事故があった後も、運行に適さない船を未だに運行させている。

肝心の証拠書類が提出されないことを確認できる記述も多々あります。

また日本のODAで供与されることが決まっていた新品の船舶が書類の不備で遅れたことが、アシカ号の購入に繋がったことも記述されています。

犠牲者の一人、日本のシニアボランティア梅田さんは船舶電気専門家で修理の支援をしにトンガへ行ったようです。

アシカ号の報告書はこれからミクロネシア海上保安事業を進める我々にとっても必読のように思いました。私はまだまだ海洋問題について素人ですので、是非関係者の皆様に読んでいただき、ご教示いただきたい、と思います。

(文責:早川理恵子 2010.4.12)

前回のブログで報告書全文のリンク先が間違っていましたので修正してあります。