やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ミドルパワーの国

ミドルパワーの国

 

 日本のJICAに当たるオーストラリアの援助機関AusAIDのトップ、即ち緒方理事長に当たるPeter Baxter氏が近々来日する、という。在京オーストラリア大使館から、太平洋島嶼国支援に力を入れている笹川太平洋島嶼国基金に面談の打診があった。羽生会長の提案で、関係者を集め勉強会を開催しましょう、ということになり、担当官に話しをした。

 一瞬、担当官が息をのんだ。まずい提案だったかな?とこちらも一瞬不安に。ところが答えは逆だった。「笹川平和財団始め民間団体はとても協力的なのに、なぜ政府機関は違うのでしょう。キャンベラにすぐ伝えます。喜ぶしょう。」

担当官の話しは続く。「昨年のPIF総会で援助国のコーディネションが約束されたのですがJICAにコンタクトしても反応が悪いのです。オーストラリア外務省のスタッフはほとんど全員が太平洋島嶼勤務の経験があり島を知っていますが、日本は違うようですね。」。日本主催の島サミットでも日豪NZ の援助国側の協力が合意されたが、具体的動きはない、と日本外務省関係者から聞いたことがある。

 オーストラリアのODA総額は年間約3千億円、その内約25%強の800億円が太平洋島嶼国を大将とする。800億円のうち約半分はPNGへの支援だ。比べて日本に太平洋島嶼国支援金額はODA 全体の2-3%。「日本に太平洋島嶼支援政策はあるのでしょうか?」。この問題は笹川太平洋島嶼国基金前運営委員長でもあった渡辺昭夫先生も指摘され、勉強会を過去に実施した経緯がある。

 外務省でオーストラリアのことをまともに相手にしたのは小倉和夫大使くらいです、とオーストラリア研究者から聞いたことがある。APECは日豪のコラボで設立された。外務省ではなく通産省が動いた。ミドルパワーの国は相手にしない、ということだろうか?

Peter Baxter氏は外務省北東アジア局長を経験し北朝鮮との外交経験もある。AusAIDだけでなく、いろいろ聞いてみたいことが出て来た。

 

(文責:早川理恵子 2010.4.23)