やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

オーストラリアの沿岸警備

「オーストラリアの沿岸警備」

人口一人当たりのEEZを東京ドームで測ると

半分強―日本

10個分―オーストラリア

20個分―ニュージーランド

580個分―ミクロネシア連邦

650個分―パラオ共和国

720個分―キリバス

760個分―マーシャル諸島

 全世界のリストを作ると面白いかもしれない。既にやっている人がいればご教示ください。

 オーストラリアの沿岸警備の事を調べようと思って数字を調べていたら、他も気になって計算しだした。人口もEEZ もソースによって微妙に、また時に大きく違うので、出した結果は自信がないが、ざっとこんな感じ。

 日本とオーストラリアは15倍も差があるのに、オーストラリアはさらに太平洋島嶼国まで面倒見ようとしているのだから海の安全保障とはpolitical will と political commitmentである。

 さてそのオーストラリアの沿岸警備だが、Australian Volunteer Coast Guard (1961 est.)とRoyal Volunteer Coastal Patrol (1936 est.)、と2つある。どちらもボランティアで法執行力はないが、Search and Rescueを行っている。この2つについては別の項で整理したい。

 それでは法執行力を持って警備しているのは誰か。海軍と税関のcoast watch division, そして各州の警察である。オーストラリアは態度も図体もでかいし、国土も広いので誤解しやすいが、人口は東京都とほぼ同じ。また広大な大地はほとんどが砂漠で限られた沿岸に人口が集中している。25,000キロメートルの海岸線を守るには国民一丸のアプローチが必須であろう。日本の海岸線は29,000キロだ。

 労働党は9.11以降、法執行力のある沿岸警備隊を設置することを提唱。ラッド政権は米国に模したdepartment of homeland securityを新設し沿岸警備隊を作る計画もあったようだが、中止したようである。それよりも連邦警察にその役割を持たせようとする方向。

 オーストラリア連邦警察はTransnational Crime Unit(TCU)を太平洋島嶼国に展開している。現地警察と協力し越境犯罪取り締まり強化することが目的だ。2008年にTransnational Crime Unitが米豪FSMのイニシアチブでポナペに設置された。PPBとの協力も進めようとしている。

<参考資料>

The Age, December 5, 2008, Rudd scraps plan for new department, coastguard

The Sydney Morning Herald, September 2001, “The Beazley Vision”. ― Kim Beazley's address to the Asia-Australia Institute at the University of New South Wales

“Micronesian Transnational Crime Unit Commence Operation in FSM”FSM Information Service, April 29, 2008.

Ciara Henshaw, “Strengthen the rule of law in the Pacific through international crime cooperation”. Conference paper. Center for International and Public Law, Australia National University. 2007.