やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ODA22億円、Japan-Pacific ICTセンターオープン

Japan-Pacific ICTセンターオープン

 

 2010年7月6日、Japan-Pacific ICTセンターが南太平洋大学に正式オープンする。22億円の日本のODAだ。このことは2つの点で自分にとって感慨深い。

 

<PRESS RELEASE> 1 July 2010

OFFICIAL OPENING OF THE UNIVERSITY OF THE SOUTH PACIFIC JAPAN-PACIFIC ICT CENTRE

 

 

 まずは、このICTセンターは日本・豪・NZのODA協調案件であるUSPNet再構築の延長線上にあるからだ。USPNet再構築は故カミセセマラ大統領要請で私が6年かけて日本のODAにした案件だ。

 当時在フィジー日本大使館は同じ首都スバにありながら、援助対象機関ではないという理由で南太平洋大学の情報収集を積極的に行っていない、と大使館員から聞いた時は唖然としたが、今となっては笑い話だ。これは外圧でODAを動かすしかない、と当時のPIFタバイ事務局長、USPのソロファ学長を相手に一世一代の勝負(!)をしたことは懐かしい。

  2つ目はこのセンターに"Japan"が入っていることだ。これは故牧野修博士の遺産である。牧野さんは日本の電気企業に席を置きつつ、JICAの専門員として、長年途上国支援を続けられた。晩年はこのセンター計画の責任者だった。フィジー始め南太平洋はオーストラリアやニュージーランドの裏庭のようなところだし、中国やインドの支援も目覚ましい中で、日本の存在を示すことは重要だ。現地に反対の声がある中で牧野さんが粘って"Japan"を残したことは意義深い。牧野さんは渡辺昭夫基金運営委員長主催(当時)のデジタルオポチュニティ研究会のメンバーで、このセンターがいかに草の根、コミュニティレベルまで活用されるか、と言ったことをよく協議させていただいた。

  もうひとつ嬉しいニュースがある。このセンター開設と同時に日本の衛星実験WINDSの地球局が南太平洋大学に供与され、横浜国立大学が遠隔医療の実験を行うとのこと。

 WINDSは官邸のe戦略の国際協力事業、アジアブロードバンド計画の目玉事業である。基金研究会がアジアだけでなく太平洋にも応用して欲しいとのパブコメを提出、最終報告書に採用された経緯がある。このパブコメは自分が産休中、明後日が締め切り!と委員から連絡あり、数分で書き上げ回覧。研究会の承認を得てギリギリセーフで提出した。火事場の馬鹿力ってやつだ。これも今となっては笑い話だ。