やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

太平洋地域の海洋安全保障の新秩序 ― Regional Maritime Coordination Center(1)

太平洋地域の海洋安全保障の新秩序 ― Regional Maritime Coordination Center(1)

 

 

 日本財団、笹川平和財団が進めるミクロネシアの海上保安案件の重要なテーマがRegional Maritime Coordination Center(RMCC)である。

 

 現在RMCCについてはmaritime security全般をカバーするものとForum Fishries Agencyが進める違法操業をカバーする2つのコンセプトがある。

 

我々がミクロネシアで展開しようとしているのは前者のmaritime security全般をカバーするコンセプトのはずだ。そして、FFAとの関係は、ミクロネシアにおいては微妙である。

 

 FFAはいわば豪州の縄張りである。ナウル協定国はそれを嫌って、今年マーシャル諸島に事務局を設置した。ナウル協定国とは魚資源の豊富な8つの島嶼国である。

 このナウル協定はミクロネシア大統領サミットの議案としても長年協議されてきた。

 2010年2月にはマグロ版OPEC構想、OTEC案を議論するため、パラオで初めてナウル協定国首脳会議が開催されるほどの力の入れようだ。

 FFAの、即ち豪州のアジェンダがミクロネシア3国始め、8つの島嶼国と共有されている、といわけではないことを留意する必用がある。

 

 もう一点、ミクロネシアの地域協力の枠組みが誕生した背景には、豪州の影響力の強い、即ち英連邦の枠組みであるPIFの活動と一線を画したかった、という事情があることを忘れてはならない。ミクロネシア海上保安案件はこのような背景の大統領サミットで決議されたことで正当性を維持しているので、FFAと共同歩調を取って豪州の影響力を強化することは微妙な話である。

 

 我々の活動は豪州のPPB活動にネガティブな影響を与えないが、その影響力を強化することはしない。豪州との信頼構築が緊急課題だ、という主張と矛盾すると思われるかもしれないが、ミクロネシア地域に対する豪州の姿勢は南太平洋よりも消極的であり、豪州の国益を損ねるという話にはならないはずである。

 逆にミクロネシアにおいては日米が役割を強化する方向にもっていくことが理想だ。  

 なぜならば米国にとってミクロネシア海域は、ハワイからグアム、さらにはインドネシア、フィリピンへ広がる安全保障活動の接点であるからだ。さらに独立と引き換えの自由連合協定には当該国での米軍活動を許すという合意がある。

 そして、沖縄の米軍に出て行け、と言っているだけの日本がそれでは太平洋の安全保障に何を貢献するのかと問われた時の答えになる、からである。

 

(文責:早川理恵子)

 

次回はBergin、Batemanが提案するRMCCについてまとめます。

 

yashinominews.hatenablog.com