やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

Collective Crime vs 七人の侍

Collective Crime vs 七人の侍

 

<マーシャル諸島の2つのニュース>

 年明け1月、マーシャル諸島で援助金に関する2つのニュースが出た。

 一つは、米国からの支援金をマーシャル諸島政府(主に財務省と保健省)の職員が1億円近くねこばばしており、米国政府が憂慮している、という内容。*1

 もう一つは、マーシャル諸島政府から会計報告がされないので台湾政府が支援金の支払いを保留にしている、という記事だ。*2

 

 

<Collective Crime>

 島嶼国で汚職は珍しいことではない。

 米国政府が調査に乗り出した、という事の方がニュースである。

 台湾の方は、会計報告がきちんとされなければお金を出さないのは当たり前なのだが、それがニュースになったという背景には、今まで台湾が「小切手外交」と批判されたように現地の汚職を無視するどころか、誘発してきた事実があったからニュースになったのだ。

 

 グアムの友人、ジャーナリストと話をした。

「ホシは誰か?」

「噂はいろいろ流れている。」

「Collective Crime?」

「その通り。」

 ほとんどの政治家や政府職員が関与しているということだ。小さな島社会。犯人が家族、親戚、友人である可能性は大きい。裁く方がマイノリティとなる可能性が大きい。

 沖縄で仕事をしていた椎名誠がどこかに書いていたが、島社会は責任を誰も取らない。石原慎太郎の『秘祭』の如く悪事は皆で地面に埋めてしまう。

 

<国家予算の構成>

 米国はマーシャル諸島と自由連合協定を締結し、軍事ミサイル基地を設置。核実験をした歴史的背景もある。

 台湾は、中国との関係や漁業資源確保のためマーシャル諸島との関係は重要である。

 それぞれ、マーシャル諸島政府への支援は年間国家予算約130億円の66%、と8%を占める。即ち、マーシャル諸島政府が自ら拠出しているのは25%。約30億円である。

 

 

<7人のサムライ>

 マーシャル諸島に在駐されていた大平大使から伺った話である。

 マーシャル諸島にも希望がある。それはベンジャミン・グラハム氏を筆頭する、若手リーダー達だ。マーシャルの7人のサムライ。

 グラハム氏は30代前半で駐米大使のポジションを約束される程の人物。残念ながら土壇場で米国政府からクレームがついた。今時期選挙を目指している。

 ジャーナリスト招聘で来日したスザンヌ・チュータロウもその一人。島の唯一の新聞、Marshall Islands Journalの記者でオーナーの長女でもある。

 彼ら、彼女達を支援し、パイプを保つ事が、基金にとっても日本にとっても重要だと思っている。

  

 

<参考>

US concerned with ongoing fraud investigation in Marshalls

MONDAY, JANUARY 10, 2011 12:00AM

BY GIFF JOHNSON - FOR VARIETY

 

Taiwan steps up accountability requirements for Marshalls aid

FRIDAY, JANUARY 28, 2011 12:00AM

BY GIFF JOHNSON - FOR VARIETY