やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

原子力開発と太平洋の島々

原子力開発と太平洋の島々

 

 日本の原子力開発と太平洋の島々。一見関係がなさそうに見える両者であるが、日本の対太平洋島嶼国援助は日本の原子力開発のために進められてきた側面がある。

 始まりは1980年日本政府が小笠原諸島の北東の公海に低レベル放射性廃棄物投棄すると発表した頃。

 投棄問題は太平洋諸島フォーラムから強い反発を招き、1985年中曽根首相の太平洋訪問に合わせ中止することとなった。渡辺昭夫先生曰く、日本外務省のベスト&ブライテストが太平洋島嶼国問題を担当したのはこの頃。

 

 続いて問題となったのは1992年から日本が開始したプルトニウム、高レベル放射性廃棄物、およびプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料といった放射性物質の海上輸送である。 冷戦終結後の太平洋島嶼国と日本の利害関係がここにある。

 

 以上、詳細は広島大学小柏論文『南太平洋地域の核問題と日本』を参照させていただいた。

 

 

 1997年から開始した日本政府主催の「太平洋島サミット」。背景には日本の原子力開発ー即ち放射性物質の海上輸送問題もある。

 このことを実際に知る機会もあった。2000年の第2回サミットから、故小渕首相の協力依頼を受け、私がサミットに協力することになったからだ。

 私は原子力発電を反対でも推進する立場でもない。

 サミットの周辺で電事連関係者が活発に動いている様子が見えてきた。直接的活動ではなく、大使経験者等を原子力関連委員に置き、太平洋島嶼国のリーダーに原子力への理解を得ようとするのだ。

 

 もう一つの経験は、渡辺昭夫先生から協力依頼を受け、日本国際問題研究所内に置かれているPECC-PINの活動に協力させていただいたこと。担当者は東電からの出向者であった。若いおにいちゃん。当然、太平洋島嶼の「タ」の字も知らない。

 イロハから教えるのは慣れている。毎日何度もかかってくる電話に対応。彼も必死だったのであろう。が、良い結果を求めようとした我々の努力は虚しかった。

 電事連が10億円を拠出。環境、エネルギー、 観光等を対象とした「太平洋島嶼諸国開発協力基金」が設置された。