マーシャル諸島ーレビュー - 4.マーシャル諸島を世界に知らしめた2つのスキャンダル
この春発行されたThe Contemporary Pacific(Volume 23, Number 1, Spring 2011), Micronesia In Reviewのマーシャル編を、多少解説を加えながらまとめました。
2010年、マーシャル諸島を世界に知らしめた2つのスキャンダルがある。
一つは、2010年4月に発生した米国メキシコ湾での原油流出事故。
続いて6月に日本がIWCの投票に向けて島嶼国代表に賄賂を渡した、というニュースだ。
2010年2月マーシャル諸島はバハマを抜いて便宜置籍船登録数が世界3位になった。
「便宜置籍船」とは税金や人件費の削減を目的に規制の緩い外国籍で登録した船舶のことで、日本の船主や親会社も諸々な経済的便益を享受している。
2009年のマーシャル諸島への船籍登録は、石油タンカーでは221件と、石油大手企業の集まる米国の4倍だ。(注1)
メキシコ湾で爆発したディープウォーター・ホライズンはマーシャル諸島船籍であったことが大きなニュースとなった。
米国のメディアはこの不可解な「便宜置籍船」のシステムをトップニュースで扱った。
その間、マーシャル諸島政府からは一切の正式コメントを出していない。船籍国の責任について、オバマ政権は引き続き調査する事を約束している。
もう一つはロンドンの“サンデータイムス”のが明らかにしたスキャンダルである。
2010年6月にモロッコで開催されたIWCへの票買いのために、日本代表がマーシャル諸島始め小国の代表に現金、援助、売春を提供した、という内容だ。シルク外務大臣は否定したものの、IWCはマーシャル諸島始め16カ国を閉め出した。理由は年間会費を払っていない、ということで、これはシルク大臣も認めた。
この事件が影響し、長年捕鯨支持であったマーシャル諸島内で、同じく支持派であったパラオが姿勢を変えたことも相まって、議論を呼び、捕鯨反対に回る結果となった。
この2つのスキャンダルの行方は不透明なままである。しかし、このレビュー期間の最後を締めくくるには全く持もって不幸な幕切れである。
参考資料
注1:「メキシコ湾原油流出と隙だらけの法制度」ハディジャ・シャリフ(Khadija Sharife)による調査記事、訳:今村律子
<オマケ>
マーシャル諸島ーレビュー をまとめた感想
いつもはさらっと読み流すレポートも、人に(特にマーシャル諸島にいらした大平大使に!)読まれると思うと背景情報まで調べ、合計5、6時間はかけて読み込んだ。
こうやって書く事で自分の理解も深まるし、誤解や勘違いを指摘して頂けるし、無駄な作業ではなかったように思う。
1週間かけてまとめている最中に、本の執筆依頼が突然舞い込んだ。しかも明日からの出張が2週間だったのが1ヶ月になる、という状況の変化もあった。
これから1ヶ月、乗り越えられるのだろうか!