やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2011年マーシャル諸島出張

ミクロネシア海上保安庁案件は2008年4月マーシャル諸島トメイン大統領が来日し、日本財団笹川会長と会談、海洋問題について協議したのを受け、翌月笹川平和財団羽生会長がマーシャル諸島を訪問し、地域海上保安のアイデアを構想したことに始まる。

 

ミクロネシア3国の合意を取ることを私が提案し、同年11月のミクロネシア大統領サミットの議案に上げ、合意に持ち込んだ。それからしばらく、一歩下がって臨時部隊として関与していたが、またこの4月から担当することに。

しばらく遠ざかっていたミクロネシア関係者とのネットワークをメンテすることも今回の出張の目的だった。

マーシャル諸島出張中、幸いにもトニー・デブルム議員にお会いできた。同国独立以来、一手に外交を任されてきた大物政治家である。

 「ミクロネシア海上保安事業、しっかり進んでいます。」

デブルム議員はあの時の事を覚えていてくれて、わざわざ我々の方へ足を運んでくれ「よかったよかった、ありがとう。」と言っていただいた。

彼に本事業を理解してもらい、支持を得ていることの効果はマーシャル国内だけでなく、ミクロネシア地域も含め、大きい。

2008年11月の大統領サミットには大統領代理でデブルム外務大臣が出席していた。ちょうどトメイン大統領に不信任案の動きがあった頃だ。

パラオ、ミクロネシアは賛成の動きを確認していたがマーシャルは読めなかった。あの時の緊張は今でもはっきり覚えている。

サミットでデブルム外務大臣は、これは非常に意味のある事だ、全面的に賛成するとのコメントをしてくれたのである。この時の安堵も忘れられない。

民間団体が地域海洋安全保障を支援する、というのは世界的にも前例がない。残念ながら日本国内から雑音が届いていたがどうにかこれも乗り越えた。

さて、某大臣との会合の席。大臣から「そう言えばあの件はどうなっているのかね。」と切り出された。

若干揉めている話がある。大臣はこちらの意向を十分に知っていた。

「これこれ、こういう話と理解しているが。。。」

「大臣その通りです。ただ地域協力に雑音を出すのは本末転倒ですし、敵を作りたくはありませんし。」

帰り際に大臣から、君がこの事業に戻ってくれてよかったよ、と囁かれた。

どう理解すればよいか?一瞬ためらったが笑顔を返した。

どうにか丸く納めましょう、という暗黙の合意ができた、と理解している。

 

最後はキノ・カブア外務次官である。彼女も2008年11月の大統領サミットに参加していた。マーシャル諸島の動きが読めなかったので、彼女にアプローチした事を覚えている。当時30歳の次官登用。マーシャル諸島若手リーダーの先頭を切っている。

「あの時は民間団体が海洋安全保障を支援する事がどうか、疑問に思っていたけど、うまく行っていてよかったわ。」というコメントをいただいた。「もっと早く進めろ」とも。。

 そう言えば思い出した。アイランダーと京都人。口と腹が違うのだ。

油断大敵。精進精進。