やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

キャンベル国務次官補のアイランドホッピング その3 ー キリバス編

キャンベル国務次官補のアイランドホッピング その3 ー キリバス

 キャンベル国務次官補のアイランドホッピング最初の訪問地のキリバスを含め、パラオマーシャル諸島の情報が少なく、ウェッブサーフィンをしていたが、一ヶ月経った今も出ないので手持ちの情報でまとめたい。

 ハワイを飛び立ったキャンベル国務次官補一行の最初の訪問地はキリバスである。ハワイとキリバスは同じ経度上にあるが、キリバスを2つに分けていた日付変更線をキリバス政府の判断で東にグググと延ばした。よってハワイと同時に見る太陽はキリバスの方が一日早い。

 在ニュージーランド米国Huebner大使のブログには、キリバスでは気候変動と経済開発についてアノテ・トン大統領と話す、と書いてある。結果がどうだったのかという情報が今だ入手できていない。よってキリバスは2008年3月に実施した自分のトン大統領との面談を参考にまとめたい。

 まずなぜキリバスか?軍隊があるわけでも米国との自由連合協定を締結しているわけでもない。しかしながら太平洋にハワイを含め多くの島嶼を領有する米国にとってキリバスはお隣さんなのである。

 キリバスは地理的には太平洋のど真ん中、赤道を挟んだ場所位置し、355万km2の排他的経済水域は下記7つの国・地域と接している。

米領(ハウランド島ベーカー島、ジャルビス島、キングマン環礁)、ナウルマーシャル諸島、ツバル、トケラウ、クック諸島、フレンチポリネシア

 それからキリバスは太平洋島嶼国の中でも、自律的行動に出ることで知られている。冷戦時代に米ソを相手にした漁業交渉でソ連と協定を締結した話は有名である。

 そして今回のキャンベル国務次官補アイランドホッピングのハワイから南へ向かう経由地でもあるし、加えて気候変動ではツバルと並んで世界から注目を集める国だ。

 トン大統領との面談ではフェニックス諸島を世界最大にサンクチュアリにする話しを伺った。そして今でも忘れられないのが急に大統領の口調と顔つきが厳しくなり、領土問題に言及された時だ。

 フェニックス諸島の北に隣接する米領ハウランド島ベーカー島について

「これらの島の所有権の根拠について米国と話をしなければならない。」

と明確に述べられたのである。もしかしたらキャンベル国務次官補との面談でもこの話しが出たのではないかと想像している。

 米国がこれらの島を領土としたのは領土拡張主義の時代に米国が勝手に作ったグアノ島法に依拠する。これは鳥のウンチ(燐鉱石)があって誰も占有していない島を米国市民が見つけて領有権を主張したら、大統領令で軍隊を派遣し保護するという内容。ナント今でも有効な法律だ。

 キリバスに隣接するハウランド島ベーカー島の2島と、他に隣接する、ジャルビス島、キングマン環礁は無人で経済活動はない。唯一の主張はブッシュ大統領が退任前に駆け込みで制定した海洋保護地域である。

 トン大統領、キャンベル国務次官補、9月にニュージーランドに来るので聞いてみたい。