岩田温著、KKベストセラーズ、2011年
著者の岩田温氏は若干28歳である。私の息子の年齢である。
世の中がだめになると人間が輝き出す、と言うのは本当かもしれない、と思った本である。個人的な印象は、今は亡き永井陽之助先生と小室直樹氏を足して二で割ったようなキレのよさと奥深さを感じる。
この本は岩田氏の政治家の友人や学生達に古典をわかりやすく教える入門書として書かれた本だ。
「政治が人間の営みである以上、政治哲学は単なる抽象論であってはならないというのが私の信念。」と解説で自ら述べているようにわかりやすいし読みやすい。2、3時間で読めた。
しかし、奥は深い。古代ギリシャと現代の日本が結びつき、民主主義と虐殺、正義と狂気が結びつく。
マルクスが "The philosophers have only interpreted the world differently;
point is, to change it. " 即ち百の議論より一の行動、と言っていることを以前ブログに書いたが、哲学者でもあるマルクスが百の議論を否定しているとは思っていなかった。そうしたら、この本で回答を見つけた。
学問は個人の利己的な楽しみであってはならない。学問的探究に自分を専念させることができるという幸運の持ち主は、自分の知識を人類への奉仕として位置づけることを、先頭に立って実行するものでなければならない。
とマルクスは言っていたのである。
今自分は学問をする機会に恵まれている。膨大な時間とエネルギーを要する論文執筆にこれが何のためになるのか?と自答自問する時もしばしばある。しかし暫くは「人類の奉仕」となる事を目指して諦めずに続けたい。