やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

相国寺の白象

 今年の京都は、スティーブ•ジョブスに肖って「禅」をテーマに訪ねることとした。  とりあえず、まだ行ったことのない大徳寺さんと相国寺さんは必ず行こう、と心に決めた。ジョブスが歩いたかもしれないと思うと、何か特別なお寺に見えてくる。ミーハーを恥じるばかりだ。  

 大徳寺さんは朝から雪が降る寒い日、思い立って出かけた。迷路のようなお寺の様子が面白かったし、小さなお寺がひしめいて建っている景色も面白かった。2畳ほどの禅僧の修行の部屋は「元祖ワンルーム」という感じだった。  

 小石で波を象った庭に雪がつもり、まるで白波が立っているような風景だった。こういう時日本はいいなあ、と思ってしまう。

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 相国寺さんの方はパラオでお世話になったMさんをお誘いして訪ねた。  一昨年笹川会長がパラオを訪ねた際、ハンセン病患者を収容していた島を訪ねる事になり、機転を利かせて急遽船の手配から何から何までを手品のように対処してくださった恩人である。  

 辰年にちなんで鳴き龍を見学させていただくつもりだったが、まだ新年の行事で公開していないという。しかたなく敷地内にある承天閣美術館を訪ねた。

 「よみがえる俵屋宗達のモダニズム」という展示を開催中で長沢芦雪の「白象唐子図屏風」に立ち止まった。立ち止まったのは思考である。

 「郡盲象を撫でる」のことわざは、広く物事を見なさいよ、という意味だとずーっと思っていた。でもこれは違う。全体がわかった、と思った瞬間それは全体の一部でしかなくなるのだ。これが禅だと思う。

 突然2畳の禅僧の修行部屋も、自分が関わる広い太平洋も同じ修行の場に見えてきた。        

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「白象唐子図屏風」