やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

笹川会長の親戚か、羽生会長の?

ポジション、というのをあまり気にした事がない。

20代で国際機関の事務局長とか、全国組織の副会長、と言ったポジションに就かせていただいたせいかもしれない。面白い経験だったが結構大変な思いをした。

今回の米国出張で米国連邦政府とSPFUSAの方から「あなたはどのようなポジションでミクロネシア海上保安事業に関わっているのか?」と聞かれた。

なにやら日本当局から、あいつは笹川会長の親戚か何か、羽生会長とは特別な関係にある、と米国連邦政府に伝わっているらしい。

「んんん、笹川ファミリーとは6万年前にアフリカ大陸で血がつながっていた事は間違いありませんが、ここ数百年、数十年の親戚血縁関係はない、と思います。」

「特別な関係とは”ガールフレンド”とかでしょうかあ?評価されるのは美貌のせいか、と自分でも悩んだ事はありますが、どうも違うようです。愚夫にも確認したところ明確な返答をもらえませんでした。羽生会長からは仕事ができると褒めていただいておりますが、当方の知らないところで批判している、と親切な方が教えくださいました。特別といえば、特別かもしれません。しかし業務目的もなく出張に出すほど財団に予算的余裕はないと思いますが。」

以前、産經新聞論説委員で笹川太平洋島嶼基金運営委員もしている千野境子さんからアドバイスを受けた事がある。「自分がやっている事は言わないで、全て上司の手柄にしないさい。」

それであまり言わないようにしていたが、あまりの唐突な質問に適切な答えが見つからず、焦って自分の業績を洗いざらいバラしてしまった。

島嶼基金では第1次事業ガイドライン以来自分が作成してきました。過去20年で延べ150件位の事業をこなしてきました。最近は大学生用の教科書も書いたんですよ。ミクロネシアの地域協力枠組み形成は2つ目の修論に書いた結論の一つなんです。本事業をミクロネシアの枠組みで立ち上げたのは当方の意見です。大統領サミットを活用することも当方の意見です。さらに元首相のカードを使う案も当方の意見でした。意見だけでなくそのように動くよう利害関係者との調整もやっています。日本だけではありません。USCGのアレン前司令官に本事業を支持するコメントを出させたのも当方なんですよ。豪州の動きをきちんと把握し、利害調整をしているのも当方です。今年の島サミットの議案に米国と海洋問題を入れるよう提案したのも当方です。

 この事業は船を支援する事が目的ではありません。日本が太平洋の安全保障にどのように関わるか、特に太平洋を巡る日米同盟が、豪州も加えた形でどのように展開する事ができるか。戦後の日本の歪んだ安全保障体制のChallenge for Changeなんです。2008年にPACOMのキーティング司令官のコメントに反応した笹川会長の太平洋共同体論がfoundationなんです。もっと言うと、APEC創設者の一人大平首相はOcean Communityと言っていたんです。でも今まで日本はOceanやislandsに真剣に取り組んで来なかった。」

「わかった、わかった。まあ、そこまで考えは及ばないが。」

「目の前の事業を進めるために遠くにビジョンを置く事は必要ですヨ!」

他国の政府職員を叱咤激励した。

ここまで言うと相手はぐうの音も出なくなり、そうか、そうだったのか、と納得してくれたようだ。

「血縁」と「美貌」の誤解は解けたようだ。

とは言え、今のところ誰も完全否定していない「美貌」も少しは役に立っているかもしれないという希望は捨ててはいない。