やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パラオのLaw Enforcement Academy

パラオに関するブログ。ここで一旦終了します。

麻薬問題、自由連合、環境問題等々広く取り上げ、多くのコメントをいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

しかし、このブログに書けるのは本来業務のほんの一部。

太平洋の未来を編纂するようなアドレナリン全開の業務内容が書けないのは残念です。(*⌒∇⌒*)

 

ー パラオのLaw Enforcement Academy ー

 

今回レメンゲサウ大統領との面談でも多くの情報が飛び交った。

当方のパラオ訪問の前に行われた大統領の来日。安倍首相との会談はレメンゲサウ大統領の安全保障への意識を大きく変え、私が法執行を前面に出して進めている海洋安全保障事業の重要性を大きく認識されたようだ。ここにはまだ書けない大きな展開もあった。

さて、今ほどパラオの法治国家としての能力が大きく問われている時期はないかもしれない。

人身売買、密輸、違法操業等。広大な自由の海、太平洋は無法地帯にも見える。

皮肉なことに、冷戦下米ソの緊張は太平洋の海に一定の秩序を与えていた。

90年代始めから新たな脅威が太平洋に押し寄せ、また昨今の拡大する新興国家は、人口2万人の小国パラオに直接的に脅威を与えている。

 

そのパラオの法執行能力。

パラオ国家警察は毎日の配置人員が5、6名。その内病欠等が1、2名。事務所待機が1、2名。現場を見回るのは1、2名、なのだそうである。(法務省職員からの情報だが裏を取っていない。)

海洋警備(Maritime Law Enforcement)も同じような人員配置。当方のパラオ滞在中、若手職員を1名増やしたばかりであった。

 

法執行を担う人材育成がレメンゲサウ新政権の、新法務大臣の課題の一つのようである。

パラオにはポリスアカデミーというのがあった。校舎のあるアカデミーではなく、年間数ヶ月開催されるプログラムである。場所は法務省前のパラオコミュニティカレッジの空き部屋を借りて行われている。

日本からの支援も既にある。昨年ロンドンオリンピックに選手を出した柔道活動だ。青年海外協力隊に応募した高野重好さんが2003年3月から2年半派遣され、その土台を作ったのだ。

当方は個人的にパラオの柔道を支援しており、昨年末高野さんからご連絡をいただき京都でお会いする機会があった。

 

高野さんによると、国家警察だけあったポリスアカデミーは、今では州レベル、また将来警官を希望している若者の参加も含めLaw Enforcement Academyとして運営されているとのこと。今は14週間のプログラムが組まれ、約35名の参加者がある。

 

このLaw Enforcement Academy。海外からの支援提案もある。

オーストラリアは伝統的に王立海軍が太平洋島嶼国の安全保障を担ってきたが、脅威は伝統的安全保障だけではなく、違法操業や人身売買といった法執行の分野に広がっている。

これらの脅威を扱うのは海軍ではなく警察、との観点よりオーストラリア連邦警察は太平洋島嶼国の治安維持活動を積極的に展開している。

ミクロネシア連邦ポナペにはオーストラリア連邦警察が4、5年前Trans National Crime Unitを設置。

 

この豪州連邦警察がパラオのLaw Enforcement Academyへの支援を過去4年提案してきたそうだが、前政権は関心を示さなかったという。

またUSCGはミクロネシア地域の海洋警備訓練をパラオを中心に展開している模様。しかし、これも場所の確保が難しく、Law Enforcement Academyの強化が望まれている。

 

レメンゲサウ大統領との会談は前回同様大統領の私邸で行われた。

帰りに子供用の柔道着が干してあるのを見つけた。今までに10着程の柔道着をポケットマネーで寄付している。「これ、私が送った柔道着かも。」と思いつつ、大統領がお孫さんを通して、柔道を、日本を理解していただいている事に感謝した。