やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『海賊の経済学―見えざるフックの秘密 』 ピーター・T・リーソン著、 山形浩生訳

山形浩生さんの密かなファンである。

内緒だけれど(この方敵が多そうなので)山形浩生さんなしでは経済の話に入れなかった、と思う。感謝。

さて、海洋安全保障のお仕事をする上で、「海賊」というのは一つのキーワードのようだ。

前のブログに国家の略奪行為の正当化が語られている。

太平洋の漁業資源を巡る争いも誰が略奪者か、という点をパラオのレメンゲサウ大統領はじめ、島嶼国政府はしっかり認識しているのである。

海賊の経済学―見えざるフックの秘密 』は小さい頃から海賊ファンの著者が経済学の視点から書いた本。

私的(民間?)略奪行為であろう「海賊」は意外と商船よりも民主的で、経済的合理性があった、という内容の本。(と理解しています。)

海賊の船長は民主的方法で選ばれ、少しでもミスを犯したらすぐクビになる。

他方、商船の船長はパワハラ、セクハラ当たり前。お給料の差も海賊の船長に比べベラボーに大きい。

海賊の方が商船より平等主義だった、のだそうだ。

しかも意外にも海賊は平和愛好者。

ジョニーデップの海賊映画でも見られるように、「海賊」と聞けば縮み上がる恐ろしいイメージがある。これは、「海賊」と出会ったら、観たら、抵抗しないでさっさと退散せよ、即ち武力行使を避けた、平和指向のイメージ作戦なんだそうです。

身近の話では、IUU 違法操業取り締まりをやっているが、違法操業の起源、原因を対処しないと、いつまでもいたちごっこのような気がする。

筆者が限りなく愛する「海賊」も、できればしない方がいいだろうし、いない方がいい「社会悪」ではないだろうか。まあ、正当性、正統性の中から悪が生まれてくるんだろうけど。