やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

安倍首相の太平洋訪問に向けて(5)ミクロネシア3国 自由連合協定の将来

ホノルル出張では本当にタイミングよく多くの方に会う機会があった。

ミクロネシア三国と米国の自由連合協定を管理するのが米国内務省- Department of Interior

米国が出したコンパクトマネーがちゃんと使われるようミクロネシア3国及び米領のグアム、サイパンサモア、バージン諸島の担当官等をトレーニングしたり、当該国の経済調査までする。実際は"Graduate School"というところに内務省が委託している。

古い知人はこの事業の責任者だ。

ワシントンD.C.でコンパクトマネーの課題について調査した成果を発表してきたばかりだという。

2023年にコンパクトマネーが停止する予定の、ミクロネシア連邦マーシャル諸島はその日に備えて信託基金を2004年から積み立てている。しかし目標にはほど遠い。

しかも、様々な試算の結果、信託基金が整ってもグローバル経済の影響で収益は一定しないどころかマイナスになる可能性も明るみに。

なお、コンパクトマネーが現在保留されているパラオの方だが、議会承認にも得ているが予算が確保できない、というのが理由だそうだ。

削減を進める米国連邦予算。新たな予算措置は基本的にしない方針。必要な経費は外から得て来るか、他の事業を潰すか、という選択しかないそうである。噂だが,このままコンパクトマネーの凍結が続けばパラオは公務員削減を強硬するしかない、とも聞く。

さて、友人の話。詳しい資料はウェッブに出ているから、という事で後は自分で勉強しろ、という事のようだ。

その資料が下記である。

A Decade of Economic Performance in the Freely Associated States:

Comparing and Contrasting Outcomes for the Federated States of Micronesia, Republic of the Marshall Islands and the Republic of Palau from FY03 to FY13

EconMAP Presentation: January 14, 2014, Washington, DC

http://www.pitiviti.org/initiatives/economics/presentation.php

パワーポイントのグラフでまとめた発表資料はわかりやすい。

各国の経済状況と、信託基金を含む政策面、そして将来の見通しの3点から、各国の状況をまとめている。

(以下数字はグラフからの概算なので引用しないで下さい。各国毎に約100頁のレポートがまとめられています。サマリーしか読んでいません。)

ミクロネシア連邦(FSM)、マーシャル諸島(RMI)、パラオ(ROP)。この中で一番経済的に健全なのがパラオ

国民一人当たりのGDPは、FSM $2,500 RMI $3,200 ROP $11,000 とパラオが飛び抜けている。

パラオは観光産業が伸び、2009年から2012年の4年間に、年間$30 millionから$42 millionと急成長。

他方FSMもRMIも観光産業はほとんどない。

ちなみに人口は大ざっぱに FSM 10万人、RMI5万人 、 ROP2万人 である。

この他に3人に一人は米国に住んでいる。

RMIは漁業権収入が2009-2012にかけて$3million から$10millionと3倍以上伸びている。

3カ国中一番大きなEEZを抱えるFSMも$20millionから$30millionへと大きく伸びている。

ROPは$1−3millionとほぼ横ばい。

この伸びは漁業資源管理枠組みのナウル協定による新政策の成果だと思う。

次に信託基金

1980年代からROPは準備していたようで、2024年の目標$294Millionの目標に対し2013年には$180millionに達している。

FSMは2023年の目標基金$1.68billionに対し、2013年時点では$411millionなければならないところ、$306million.

RMIは2023年の目標基金$745millionに対し、2013年時点で$213millionなければならないところ$194million

RMIは不足分を台湾からの資金援助で埋めたりもしているようだ。

要は米国のコンパクトマネーが切れる9年後に向けたRMIとFSM の信託基金準備は予定を遥かに下回っているだけでなく、パラオに比べ観光産業等の外貨獲得産業がない両国はもっと深刻である、ということだろう。

友人は、こんな不安定な信託基金に国家運営が頼っていいのだろうか、とつぶやいていた。

米国は戦後70年もやってきたのだ。援助疲れもあるであろう。

昭和17年若干32歳の大蔵事務官が南洋庁の予算主査を務めていた。

Pacific Ocean Communityの主唱者でもある、大平正芳元総理である。

ここは日本の出番のような気もするのですが、どうでしょうか?