やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パラオ レメンゲサウ大統領訪日(1)太平洋EEZを守れ

2014年の最後の(多分)天命は、ミラクルと共に降り立ったのである。

 

選挙でこの話は流れたか、と危惧していたがパラオのレメンゲサウ大統領が12月16−19日訪日された。

これが以前ブログに書いた今年初頭に笹川会長と面談した際に議論させていただいた案件である。

やる事はやった。後は神の声を天命を聞くのみ、と思っていたところであった。

 

天皇陛下との会見や、日パ首脳会談の模様はニュースでも取り上げられている。

この中でも日本記者クラブの下記の講演とJapan Timesの"Palau President Remengesau seeks visit by Emperor, Empress in 2015"が多くの情報を含んでいるのではないだろうか?

 

 

 

日・パラオ首脳会談等‐平成26年12月17日(記録映像庫)

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201412/17palau_shunou_kaidan.html

 

 

<ペリリュー戦の、第二次世界大戦の仇討ち>

レメンゲサウ大統領は

「日本に太平洋地域のリーダーシップを取って欲しい。」

「違法操業を含む海洋安全保障は日本がイニシアチブとって欲しい。」

と述べている。

レメンゲサウ大統領は現在地域組織PIFの議長でもある。即ち地域の代表としての立場もある事を忘れてはならない。そのレメンゲサウ大統領の言葉は一国の首脳を超えた重さがある。

 

さて、このコメントの意味を理解し感動しているのは日本に何人いるであろうか?もしくはこのコメントに驚愕している米豪関係者はどれだけいるだろうか?

私は、この大統領のコメントでペリリュー戦の、第二次世界大戦の仇討ちができた、と咄嗟に思った。

違法操業監視とは太平洋のEEZを、即ち太平洋の海洋全体を日本に守って欲しい、アクセスを許す、という事である。

 

米豪は先の大戦でこの太平洋から日本を追い出したのである。その追い出した地域の、今は主権国家となった太平洋の島嶼国が日本に戻ってきて欲しいと記者会見で明言したのである。

ちなみに米国は、先の大戦で日本の占領からパラオを解放した、と未だにイケシャアシャアと議会等で述べている。そんなのは嘘である事は、ニミッツ司令官の本を読めばわかる。ペリリュー戦はフィリピン奪回のためであった。即ち米国自身の利益のためでしかなかった。

 

 

<レメンゲサウ大統領の殺し文句>

記者会見の質問で、日本とパラオの関係を尋ねられた大統領は、”あの”殺し文句を披露した。

「日本とパラオは太陽と月。太陽がなければ月は輝けません。」

アイランダー外交術を知らない日本人はこれでイチコロであろう。

もし米国との関係を尋ねられれば

「月と星は共に夜空を照らす友人です。」

とか言うのである。

私は「外交術」を、国際政治のリアリティを島の人たちから25年間学ばせていただいた。

 

二枚舌、三枚舌と非難するなかれ。

これは小国の、弱国の外交術なのである。(大国もやってますけど)

人口2万人の国家が国際社会で生き延びていかなければならない。パラオがベトナムの違法操業にやられっぱなし、損しっぱなしの現状を思い出して欲しい。

 

大統領は日本との関係で第二次世界大戦以前からの歴史がある事を繰り返し述べている。

また、大統領ご自身が日系4世だそうだ。

日本は、人口2万人の小国の大統領が殺し文句を披露する背景を慮って、ミクロネシア地域での、太平洋島嶼国でのあるべきリーダーシップを取るべきだ。

これが、現在PIF運営で揉めてる豪NZへのアドバイスにもなるであろう。