『宿命の子』には役所との関係が書かれている。
「それで陽平は張成沢との交渉の中身を伝えたが、「ほう、そうですか」のひとことで済まされた。柳井の態度は、困惑というより冷淡で、不吉な予感に陽平はとらわれた。」
外務省のこの対応はよくわかる。「ほう、そうですか」の裏側には民間団体が余計なことをしやがって、というメッセージが読める。私もいやというほど経験してきた対応である。
しかし、運輸省(現国交省)との関係はミクロネシア海上保安事業が始まるまで一切知らなかった。
国交省職員、海保職員から
「笹川会長に油を売りやがって」とか「笹川会長にしがみつきやがって」とか言われるのである。
「なんで皆さんとは別組織の笹川会長が気になるのですか?」と聞いた事がある。
「力を持っているからだ。」との回答であった。
同書によると、運輸省の天下りの財団理事長ポストをはずし、財団評議員人事に介入する運輸省を訴えていたのである。これは知りませんでした。この件以来運輸省は無理難題を言わなくなった、とある。運輸省を訴えていた事は知りませんでした。
公営ギャンブルの運営とその公共活動の展開はお役人がやった方が公正なんて思わない。実証主義的理由がある。
太平洋島嶼国の遠隔教育研究会を立ち上げるために加藤秀俊教授に委員を依頼すべくご自宅に伺った。1992年だったと思う。
「笹川ねえ。以前役所が笹川潰しを目的に横並びで公営ギャンブルの調査をする事になり、委員になった事があるんですよ。一番きれいだったのが競艇でした。」
財団に入って2年目。随分オソロしい話を聞いてしまった、と思ったと同時に「役所よりきれいなんだ。」と安心した。
競馬(農林省)競輪、オートレース(通省産業省)、宝くじ(財務省)、サッカーのtoto(文科省)、まだあるだろうか?今これらの運営はどうなっているのだろうか、とふと疑問に思った。
2010/03/29 【共同通信】