やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

内海善雄元ITU事務総局長とインターネットガバナンス

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数年前、WSIS会議のhidden agendaがインターネットガバナンスであった事、即ち米国一極支配のインターネットの状態をITUが変革する事にあった事を知ってしばらくショックを受けていた。

 

なぜショックだったかというと、以前書いた通り、2003年に東京で開催されたWSISの会議に20名近い太平洋島嶼国のステークホルダーを集めてサイドイベントを開催したのは笹川太平洋島嶼国基金、即ち自分であったからだ。

 

WSIS東京宣言を作った笹川太平洋島嶼国基金

https://yashinominews.hatenablog.com/entry/2015/08/06/102801

 

 

インターネットガバナンスの変革は現在活発の議論されているサイバーセキュリティの問題につながる。インターネットが米国の一極支配から、多極支配になってさらにインターネットガバナンスは混迷の極み、国家安全保障の危機に遭遇している模様だ。

 

こんな重要な動きを作ったのは他でもない、日本人の内海善雄元ITU事務総局長のはずだが、当方が時たま見かけるインターネットガバナンスの議論に同氏の名前は見当たらない。

内海氏は米国という虎の尾を踏むどころか、正面に出向いて思いっきり引っぱたいたのである。

ある方に寄ると米国は内海氏を徹底的に嫌っている、という。それはそうであろう。

 

内海氏は何を考えてこんな敢行に出たのか?

 

2000年の沖縄G8で日本政府が主導したIT憲章(通称)ではデジタルディバイド解消に1兆5千億円(確か)の措置が発表されたが、外務省はすぐにこのネット巡る国際政治に気づいたのであろう。即ちこの予算の多くがITUに流れる可能性に気づいたのであろう。そして、その政治的意味も。

(インターネットガバナンスに関する日本政府の曖昧な対応は実は外務省対総務省という国内問題であったのではなかろうか?)

1兆5千億円の実際の援助案件は少なかったと思われる。評価も報告書も確認できない。(あったら教えて欲しい)漏れ聞く所では、その後外務省では本件はアンタッチャブルとの話もあった。

 

 

内海氏は何を考えてこんな敢行に出たのか?

幸い、内海善雄氏はウェッブを設置し、ご自身の意見を公表している。

 

内海善雄 前ITU事務総局長 ホームページ

http://yutsumi.web.fc2.com/

 

もしこれが英語で書かれていればもっと影響力はあるであろう。それほどまでに内海氏の米国に対する批判的態度は明確である。

 

その中でも気になったのが2011年11月24日から同年12月19日まで17回に渡って連載された「デジタル通信革命の舞台裏」である。ここに内海氏の対米観がしっかり読み取れるような気がする。

この連載は上記のウェッブにも掲載されている。

http://yutsumi.web.fc2.com/message/book/denpa_rensai.htm

 

まずは連載2回目にある、内海氏の米国留学体験だ。そこで見たのは米国ではノーという事が必要、米国の貧富の差(黒人差別も?)大学教育のレベルの低さだ。

そして連載12回目に米国との交渉の舞台裏が暴露されている。

 

 ”これら米国の要求を受けて立つ側になって直接、間接に交渉に携わった私は、まったく道理に合わない要求を受け入れなければならないことに「日本は主権国家か?」と歯軋りをする思いでいっぱいであった。”

 

この連載を読む限りでは、内海氏の対米観は批判的且つ厳しいものだ。

 

 

同連載14回には2003年のWSISの東京会議にはNTTドコモしか出資してくれなかった事が書かれている。内海氏が、このWSIS東京会議に太平洋島嶼国から多く参加があった事を喜んでいる記事があったが、納得した。

 

私も内情を今暴露しよう。

当時当方が担当する笹川太平洋島嶼国基金はPIDO (Pcific Islands Digitall Opportunity Committee)という研究事業を持っていた。これは1991年財団に入ると同時にUSPNet, PEACESATという事業を手がけてきた自分にとって、ICT開発が技術よりも資金よりも、政策が重要であるという知見から立ち上げた研究会だ。この研究会を基盤に、外務省と琉球大学が手がけていた交流事業を手伝って(実質仕切って)いたので、その島嶼国からの招聘者を沖縄会議の後、東京に留まらせる事とした。そして、基金事業のメディア交流事業を活用し、島嶼国のジャーナリストもここに呼んだのである。よってかなりのハイレベルと数のメンバーを揃える事になり、今思うと内海氏にかなり塩を送ったようなのだ。