黒人問題は、ジャズ以外には関心がなかった。
博論で「羅生門効果」を議論したくて、その資料を探していただけなのだ。
偶然見つけたBlack movementにおける日本人の役割。
読みたかった『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(出井康博著、2008年講談社)を欧州行きの鞄に入れた。ロシア上空で一気に読んだ。
大分県出身の中根中。あの重光葵と同郷で、重光兄弟に英語を教えている。
1870年生まれ。1888年に洗礼を受けている。
カナダに1910年頃単身移民した中根中。1930年代にはFBIも恐れるような黒人運動を主導する。
日清、日露、そしてWWiで活躍した日本はアジア、アフリカだけでなく、米国の黒人にも影響を与えたのだ。
この本で気になった章は「事実を隠蔽する日系人研究者」(164−172頁)であった。
米国の黒人運動を支援したのは中根中だけではない。この本にも出て来る疋田保一。それからRichard Aoki 。
なぜ学術研究が進んでいないのであろうか?
ジャーナリスト出井康博氏の同書は取材の課程まで書かれており、スリルに満ちている。読みやすいが、読んでいて学術研究も必要では?と思った。
埋もれた近現代史。米国で、また各国で活躍(暗躍?)した日本人の存在。探せばまだまだあるような気がする。
追記:学術ペーパーも出ている。肝腎の日本人の学術ペーパーがない(多分)のは残念。
Satokata Takahashi and the Flowering of Black Messianic Nationalism Jr. Ernest Allen.The Black Scholar: Journal of Black Studies and Research Volume 24, 1994