やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

日本とアイルランドを結ぶ「能」その1

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 今回の欧州訪問は至る所で木蓮の花に出会えた。木蓮は椿同様、日本経由で欧州に伝わってきたようだ。写真はダブリンのトリニティカレッジ。

 

初めてのアイルランド、ダブリン訪問。 色々勉強してから来ようと思ったが、何もできなかった。 エジンバラからのAer Lingusの飛行機の中で、まずはパイロットからのゲーリックの洗礼を受けた。 ダブリン空港は英語とゲール語の二重標記で、アイルランドが独自のアイデンティティを模索している事が痛いほど感じられた。 町中では1916年と100周年の文字が至るところに。。 1916年?何があったのであろう? アイルランドのイギリスからの独立は1922年だが、1916年には独立を導いた「イースター蜂起」があったのだ。今年はその百周年。

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1916年のイースター蜂起で命を捧げたアイリッシュ達

 

町中を歩くと、ダブリン市の建物に大きな詩が飾られていた。 ノーベル賞受賞者でもあるアイルランド詩人イェーツの「イースター1916年」だ。 4節からなる長い詩だが当方は下記の一カ所が心に残った。

Too long a sacrifice Can make a stone of the heart. O when may it suffice?

 

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町中に飾られたイェーツの詩。 "A terrible beauty is born" と締めくくる

 

イギリスのアイルランド植民は矢内原忠雄が、日本と韓国の関係と対比する形で議論している。 それは全く違う植民の形ではあるけれども、植民をする側とされる側の問題を考える時有効なのかもしれない。

さて、今回のアイルランド訪問の目的は、ご先祖様の一人、Lord Edward Fitzgeralのお墓参りであった。 肝心の、血の繋がった愚夫は「お墓参り」という精神的な行動に全く関心がなく、当方が必死で関連の場所を探した。

Lord Edwardこそ1798年、フランス革命に触発されて、最初にアイルランド独立運動を先導し、イギリス人に殺された人物なのである。 当方は、一昨年天命を知る年を迎え、なにやら最近神懸かりになってきた。 ダブリンの町を歩きながらご先祖様のLord Edwardが背中越しで、話しかけているような気がしたし、ダブリン滞在中、当方のお能の師匠、宇高竜成能楽師からメールが届いたのもLord Edwardとイェーツの仕業に違いない。