やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

植民される欧州 その2.1 ブレンナム宮殿と世界遺産

ブレンナム宮殿の第11代当主、John Spencer-Churchill卿は88歳で2014年に亡くなられた。

当然遺産はその息子に、ではなかった。

ご子息は麻薬で何度も警察に逮捕されている。

そこで、ブレンナム宮殿の遺産は23歳の孫、George Spencer-Churchill, Marquess of Blandfordに譲られた。

母「23歳で独身だよ。可能性あり。しかし父親が麻薬問題をもっているので、やっぱり止めておこうね。」

娘「お父さん、お母さんが訳のわからない事を口走っているので止めて欲しい。」

亡くなられた第11代当主、John Spencer-Churchill卿は4回結婚をされているらしい。そしてその生涯をこのブレナム宮殿と広大な敷地を守る事に捧げたとのこと。しかし、ご子息の教育は失敗だったようだ。

民主主義の時代になって、民衆からお金を取り上げるわけにもいかないから、ナショナルトラストにして税金対策をし、加えて宮殿の一部を解放して営利活動を展開し維持費を捻出する。

300年続く遺産を維持していなかればならない。そう思うと気の毒である。

第12代となった23歳のイケメン新当主は、ゴシップ新聞の格好のネタのようで、プライバシーとかなさそうである。

余計な心配とは思いつつも、こちらも気の毒になってきた。

母「やっぱりお金持ちは不幸だよ。お金がなくてよかったね。私たち。」

娘「お父さん、お母さんが訳のわからない事を口走っているので止めて欲しい。」

人口の1%の貴族が3分の一の広大な国土を所有する英国の問題は、所有者、非所有者の両者に不幸な状況を生み出しているのではないか?

フランス軍の植民から守った英国国土。そして今その土地改革が問題になっている。

何のためにフランスの植民を阻止したのか?

アダム•スミスが生きていればどんな提言をしたであろう?

歴史財産として残したい宮殿、そしてその周辺の広大な敷地。有効な活用方法はないだろうか?

23歳の若き当主が背負っている英国とチャーチル家の「勝利」の歴史。そして広大な宮殿と敷地。それはあまりにも重すぎるのではなかろうか。

愚夫と愚娘がこの英国の土地改革という高尚な議論を無視するので、滞在先のオックスフォード教授と協議した。

私「やはり、貴族が国土の三分の一を所有しているのは、これを活用できない民衆だけでなく、この遺産を背負っている貴族にとっても不幸です。革命が必要です。無血革命。」

教授「無血革命ね。ところで日本の皇族はどうやって収入を得ているの?」

私「税金から生活費が支払われているはずです。」

教授「税金?!」

そうだった。日本の皇族は欧州の貴族のようなド派手な生活をしていない。多分国民より慎ましやかな生活なのではないか。