丸山真男は30年程前、一度手にしたが2、3頁読んで何を言っているのかわからず捨てた記憶がある。小室直樹さんが「浅学非才」と同氏を形容していて、わからなくてよかった、と思った記憶もある。
筒井清忠先生が丸山真男をフルボッコしている同書をFBFの方から伺って初めて知った。
同書は「丸山真男の日本型ファシズム論を打ち壊した名著。膨大な史料の読み込みに基いた論証は、丸山の個人的経験と軍部に対するルサンチマンによる印象批判を「老人の戯言」にしてしまった」のだそうである。FBFの方の解説だ。
<個人的経験と軍部に対するルサンチマンによる印象批判>は鶴見俊輔氏にも通じるのではないだろうか?
1章 『日本ファシズム』論の再考察 ー 丸山理論への一批判
に始まって軍部、軍閥の台頭がこれもおそらく膨大な史料の読み込みに基いて書かれているのだと思う。
ここら辺の分野は関心も知識もないので外国語を読んでいるようだったが、涼しくなって頭も空気も澄み渡る季節になったら再読したい。
再読したい理由がある。
新渡戸稲造は「日本を滅ぼすものは共産党か軍閥である。そのどちらが怖いかといえば軍閥である」と1932年に言ってオフレコだったのを記事にされ命を狙われた。1933年に亡くなっている。
矢内原忠雄は1937年軍部を批判して、近衛文麿(当時総理)と木戸幸一(当時文部大臣)に東大を追われたのである。
この新渡戸と矢内原が批判した軍部。近衞、木戸、松本、蝋山等々が手を組んだ軍部。この軍閥とは何なのか?筒井先生の本を読み込めばわかるのかもしれない。少なくとも白黒、右左で理解できるような構造ではないようなのだ。
それにしても筒井先生がこの丸山批判を発表したのは30歳前。1976年の事で、まだ丸山崇拝者は沢山いた頃ではないだろうか?筒井先生は後書きに伊藤隆氏からの好意的批評をが忘れないものとしてあげているが誹謗中傷もあったのではないか?と想像する。