BBNJのイロハ編。引き続きJAMSTECの本田悠介氏(2016年3月31日)のペーパーから。
BBNJ条約交渉の法的論点その三。環境影響評価
これは他の論点(海洋遺伝資源、区域型管理ツール)と違ってUNCLOSの204から206条に書かれているのだそうである。
買いました。まさかUNCLOSを読む日が来ようとは思っていませんでしたが、ここは腹を括って2,600円+税を出しました。
第12部 海洋環境の保護及び保全
第4節 監視及び環境評価
第204条 汚染の危険又は影響の監視
第205条 報告の公表
第206条 活動による潜在的な影響の評価
ちなみに太平洋島嶼国は国家管轄権「内」区域でさえ、これのどれも自力ではできない。
国家管轄権外区域に関してはどうか?
本田氏のペーパーには下記のようにUNCLOSが国家管轄権外区域をカバーする判例を示している。
2011年2月に国際海洋法裁判所が「深海底における探査活動を行う個人及び団体を保証する国家の責任及び義務」に関する勧告的意見を出し、「環境影響評価を実施する義務は、UNCLOS 上の直接義務であり、慣習国際法上の一般的義務でもある」と示し、国家管轄権外区域における資源と活動に対しても適用されることを確認した。
よって環境影響評価に関しては手続き的義務として、今後のBBNJ交渉の中身に左右されるということのようだ。
ここで思い出すのは米国のメキシコ湾原油流出事故である。
米国の公聴会で、そもそも原油採掘の危険性を評価する第三者(確か沿岸警備隊だったと思う)にその能力はない。採掘会社の自己評価に任せるしかなかった、という話だ。
もう一つはバヌアツで保留されているこれも国家管轄権「内」区域の海底採掘の案件だが、そもそも海底資源開発は未知数でどのような事故が起るか想定もできない、という内容だ。
以前バヌアツの海底資源開発の事はブログに書いた。太平洋島嶼国ではすでにトンガやパプアニューギニアが採掘を始めているはずだ。その環境評価の実態はどのようになっているのか?国家管轄権「内」区域の話ではあるが、BBNJの議論にも関係して来るのではないか?