やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パラオのパワーポリティクス

パラオの大統領選を追っていて見えてきた、同国の伝統的なパワーポリティクスがある。

現在大統領を競っているのは、現職のレメンゲサウ大統領と、レメンゲサウ大統領の妹と結婚し、普段であれば同じ派閥で共闘するスランゲルジュニア氏である。

ドイツ、日本の統治以前は、バベルダオブのマルキョクとコロールに2人のパラマウントチーフ、大酋長、即ち2つの勢力があってパラオの勢力均衡をを保っていた。

しかし、ドイツ、日本がコロールに港を開き、ペリリュー、アンガウルで燐鉱石を開発してから、経済の中心、即ちパラオ全体のパワーが、コロール、ペリリュー、アンガウルに集中し、バベルダオブの開発が遅れ、ポリティカルパワーも一極集中となった。

独立後、その格差は縮まるどころか、広がるばかり。しかも、コロール、ペリリュー、アンガウルのリーダー達は怪しいビジネスに手を出している。(生きて行くためにはしょうがない、と思うのですが)

今回のレメンゲサウ(コロール出身)対スランゲルジュニア(バベルダオブのNgatpang州)の対立はそんな、伝統的なパワーポリティクスを背景を含んでいる。

もう一つ興味深いのは、女性のポリティカルパワーだ。

パラオの酋長(男性)は女性が決定する、と以前から聞いていたが、表に出ない形で女性が社会を仕切っている、らしい。

アイライに女性酋長がいて、彼女こそバベルダオブのマルキョクとコロールの2人のパラマウントチーフに拒否権を発動できるのだそうである。

パラオ大統領を追っていて、見えて来るのは、このアイライの女性酋長のパワーバランス、リバランスの試みだ。

パラオ人の名字に、金太郎さんとか、松太郎さん、というのがあるが、あれは母親の名字を隠すための方便だそうである。それだけ秘密守秘であり、母系社会、女性のパワーが強いと言う事であろう。

以上、文献を調べたわけでもなくなんの確証もないのですが、何人かのパラオ人に聞いたら、だいたい当たってる、ということなのでメモしておきます。