やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

海洋保護区とシルビア・アールのMission Blue

 

シルビア・アール、女性海洋学者。

パラオのレメンゲサウ大統領が提唱する全EEZ海洋保護区の会議によくゲストで出ていたので、記憶にあった。

 

彼女の名前を坂元教授と、田中則夫教授の論文で目にし、公海の海洋保護区の議論で重要な人物である事を知った。彼女が1991年、 NOAAの会議で公海の海洋保護区を最初に提唱したのだ。

 

 

「環境・生物資源の保全のためにとり得る措置―海洋保護区を中心に―」『海洋法の執行と適用をめぐる国際紛争事例』(財)海上保安協会(2008年)73頁

 

田中則夫 『国際海洋法の現代的形成』東信堂 2015年 311頁

 

 

田中教授が参照しているのが下記の論文。ウェッブで読める

Kristina M. Gjerde、High Seas Marine Protected Areas、THE INTERNATIONAL JOURNAL OF MARINE AND COASTAL LAW, Vol 16, No 3

https://www.cbd.int/doc/articles/2002-/A-00156.pdf

 

 

シルビアとな何者か?

彼女を主人公にしたフィルムMission BlueがNetflixで観れる。彼女の海洋保護区への影響を知って観る事とした。

 

シルビアがNOAAのChief Scientistに任命されたのが1990年。そしてラディカルな彼女がNOAAの、特に漁業部から批判を受け、退任したのが1992年。退任時の記者会見はこのフィルムで観れる。即ち1991年に公海の海洋保護区を提唱した翌年である。

 

NOAAを退任したシルビアは自由に活動を展開する。日本の築地を訪ねる場面がフィルム後半にあるのでここは是非観ていただきたい。「お魚が、お魚が。。。」シルビアほぼ泣いている状態なのだ。

笑っちゃったけど、笑ってはいられない。これが海洋保護のマジョリティの姿だ。

 

下記の記事によると、このMission BlueはThe Coveと同じFisher Stevensが制作している。The Coveは観ていないが日本の太知のイルカ漁を批判したフィルムである。

 

The Cove Producer Fisher Stevens on His New Netflix Documentary, Mission Blue

http://www.vulture.com/2014/08/cove-director-fisher-stevens-on-netflix-documentary-mission-blue.html

 

 

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Mission Blueの最初にレイチェル・カーソンの詩のような文章が紹介される。

シルビアもレイチェルも女性で学者でしかも美人。その表現は科学者というより詩的だ。

そしてこのような表現が国連などの国際政治に大きな影響を与える。多分マグロの卵の数の議論よりも魅力的だ。

 

海洋保護活動とはなんなんだろう?と考えさせられます。

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