やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パラオ海洋保護区の行方(4)

数日前、ブログでも取り上げた下記の米本昌平教授の記事で、日本政府が発展途上国に対し推定で総額5千億円相当の排出枠を買い取った、と言う指摘を読んでから「もしや、もしや」と考えていた。

トランプ大統領の一撃で温暖化交渉の理想主義は剥落した 京都議定書は日本外交の稀にみる大失敗であった」 東京大学客員教授米本昌平

http://www.sankei.com/column/news/170323/clm1703230007-n1.html

そこに、20年近い知り合いのパラオの閣僚からメールが届いた。

この方は当初からこの80%商業漁業禁止の海洋保護区法案が海洋法上の疑義その他問題を抱えている事を指摘していらっしゃる方である。

「あの法案は20%の国内漁業を許可し80%の商業漁業全面禁止。これで失われる入漁料を環境税で補おうというアイデアで、これは温暖化交渉の排出枠取引を参考にしたのである。」

ビンゴ!

やはりそうであった。手つかずの自然がお金になる仕組み。多分、この排出量取引以外に、グレック・ストーン博士がキリバスに紹介したナショナル・トラストのアイデアも参考にしていると思う。

知人は続ける。

「しかしだね、この法案の問題点は入漁料が値上がりし環境税の収入より多くなったこと、さらに高度回遊魚は木と違って動き回るから監視が必要である事がわかったんだよ。」

(それって今まで監視していなかったって事ですよね?)とは流石に聞き返せなかったし、(それって何の詳細も協議せずに法案通したって事ですよね?)というのは皆知っている事なので敢えて言わなかった。

手つかずの自然がお金になる。

この仕組みを示したは、日本政府であった、という事ではないでしょうか?