やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

パルド大使と人類共同の財産(1)

安倍総理のマルタ訪問がきっっかけで、海洋法の父とも呼ばれるパルド大使の事をサクッとウェッブ検索したら、彼の海洋哲学はヨハネ23世の回勅が原点であること知って驚いた!

 

ヨハネ23世とパルド大使と国連海洋法条約

yashinominews.hatenablog.com

 

しかも現在の海洋法とパルド大使が目指したものは違っているという。即ちヨハネ23世の思いと違う方向にUNCLOSは向かっているのか?

それでパルド大使を知る事は海洋法の基本だよね、と考え資料を探し出していたところ、図書館でコモンウェルスの本等に出会ってしまい、パルド大使は全然進んでいない。

 

返却日も近づいてきたので、頑張ってメモだけ。

最初に見つけたのが、下記の本。多分パルド大使に関して基本的な事が書かれている。

 

『国際海洋法[第二版] 』林 司宣 (著), 島田 征夫 (著), 古賀 衞 (著)、有信堂高文社、 2016/5/27

 

P13

以上のような理由から(というのは海底資源開発の技術が進んだという話です)、1967年11月、マルタのパルド(A. Pardo)大使は国連総会において、マンガン団塊等の新しい新海底資源の開発の可能性に触れ、また海底の軍事的利用、放射性廃棄物の投機等による汚染、無秩序な資源開発問題等に言及し、深海底およびその資源を「人類の共同財産」とし、それを平和的利用のみに使用し、人類全体のために管理する目的の新たな国際的制度を樹立すべき事を提案した。総会は同提案に基づき、海底平和利用委員会(海底委員会)を設置してこれらの諸問題の検討を命じた。

 

p. 84

前略 .. 大使による深海底に関する演説は、海洋に関心を持つ世界の国々に衝撃を与えずにおかなかった。同演説は、(中略)とくにその資源については途上国の利益を考慮すべきことを提唱するものであった。国連は、直ちに海底平和利用委員会を設置、1970年12月の国連総会で、深海底原則宣言(「国家管轄権を超える海底およびその地下を律する原則の宣言」)を採択し、同時に1973年より第3次海洋法会議の開催を求めた。

 

p. 112-113

前略。。。具体的に海底のみに関する初期の提案としては、フランスの国際法学者ラプラデル(A. G. de Lapradelle) のものがある。彼は1949年のフランスの学会における報告で、領海外の海底はすべて万人の共有物とみなされ、その資源の探査・開発・分配は国連の手に委ねられるべきであるとした。その後、アメリカの地質学者メロー( J. Mero)は、1965年に出版した著書『海洋の鉱物資源』において、(中略)同年12月ジョンソン米国大統領が開催した「国際協力に関するホワイトハウス会議」において、「天然資源の保存・開発に関する委員会」は、早速メローの指摘したマンガン団塊のの開発可能性に言及し、これらの「世界共同体の共同財産」たる資源の分配等は、国際法に従う必要があるとし、そのための国連専門機関を設立すべきことも示唆した。同大統領はまた、翌1966年7月の演説において、「深海と海底は、全ての人類の遺産であり、またそうあり続けることを我々は確保しなければならない、」としている。(この後パルド大使のことが述べられているが、上記の繰り返しなので省略。でもパルド大使の前に米国ジョンソン米国大統領がCHMを述べていたのか?これも原文探してみたい。)

 

p.158-159

1960年代に入り、産業の発展とともにタンカーの増加に伴ってその規制の必要が叫ばれ (中略)規制が強化された。1973年のMARPOL条約。(ちょっと写すの疲れてきました)

p. 159 当時はまだ船舶起因汚染は、旗国管轄権で十分であるとの認識が一般的で、旗国主義による海洋汚染規制は旗国が熱心でないこともあって十分に機能せず、(中略)海洋汚染の被害国(沿岸国)の利益はほとんど無視されていた。

国際社会のこうした緩慢な動きに対して、注目すべき出来事が現れた。それが、1967年の国連総会ににおけるマルタの国連大使パルドのきわめて注目される演説であり、1972年の人間環境宣言である。

 

 

1972年の人間環境宣言 ー

これはしっかり勉強していない。しかし、捕鯨問題で米国が枯れ葉剤使用の批判を交わすために利用した側面があるのであれば、1965年以降のジョンソン米国大統領の動きも関係して来るかもしれない。

「宇宙船地球号」という美名のイデオロギー、そんな形が見えてきたんですが、妄想かしらん?

 

さて次は坂元先生がパルドに関するペーパーを書いていらしたのでまとめたい。

 

 

ジョンソン米国大統領のホワイトハウス会議はここら辺から芋づる式で出て来そう。

The Development of the Regime for Deep Seabed Mining

Satya N. Nandan, C.F., C.B.E. Michael W. Lodge and Shabtai Rosenne (General Editor)

https://www.isa.org.jm/files/documents/EN/Pubs/Regime-ae.pdf