やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

ローレンツ・フォン・シュタイン著『平等原理と社会主義』(2)

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『平等原理と社会主義』(ローレンツ シュタイン (著), 石川 三義 (翻訳), 柴田 隆行 (翻訳), 石塚 正英 (翻訳) 法政大学出版局 、1990)は4部に別れている。

第一部 平等の原理

第二部 社会主義者

第三部 並列する著述家

第四分 共産主義

 

マルクスの「共産主義宣言」(1848)でコピーされたという箇所は第一部の3頁目に現れる。

 

「この両者(フーリエ主義とサン=シモン主義)と並んで、共産主義という不気味で恐るべき幽霊が現れて来る。共産主義の実現など誰も信じようとはしないが、しかし誰もがその存在を認めて恐れている。これらの現象はすべて正気でない頭脳の偶然的な産物にすぎず、自分たちの前に立ちはだかっている課題の大きさが、そのために発揮しなければならない小さな能力を狂わせてしまったのだ、などと主張できるであろうか。否、これらの現象は自らに生命を付与する要素を内包している。こうした現象を産み出した結果の背後に、しかも社会主義と共産主義を呼び起こした欲求そのものの背後に、この現象を現代フランスの最もな内的な核心と結びつける接点が隠されている。」

 

訳が悪いのか、本文が悪いのか。

何となくわかるけど、要は共産主義は正気ではないし、フランス社会の特殊な現象、という事なのではないしょうか?

じゃあ、なんで共産主義が広まって、チンピラみたいなマルクスやルソーがもて囃されたのだろう?当時のまともな学者は相手にもしていなかったようなだのだが。

 

 

<ドイツの経済学者グスタフ・フォン・シュモラーのマルクス評>

「しかしマルクスならば一度は読んでご覧なさい、文章もなかなかいいところがある。歴史を述べるところ等は面白く読めます。さうして論鋒も頗る鋭いですけれども、あの人の歴史の読み方が、大分間違っているように思う。逆境にをつて書いただけあつて、正義とか公平とかいふ方面には大分欠けてをるように見受ける。

 また哲学的のところもヘーゲルを焼き直したやうな所が多いが、確かに新味はないでもない。先ず中等教育を受けた者は彼を面白く読むでせうが、しかしわれわれ学徒の眼から見ると、ただ際どい、かつ巧であるといふだけで、読めば慰み半分に読むくらいのもので、真面目になって彼の説を読むような気はしません。」

 

参考 新渡戸のマルクス批判

yashinominews.hatenablog.com

 

シュタイン詣に来た、伊藤博文を始めとする日本人に、自国の歴史、文化を尊重せよ、と主張したシュタイン博士は、ドイツの隣国フランスが,同じゲルマンでありながらどのように違うのかを分析している、ようである。(しっかり読んでいないので自信ありません)