やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

南極ロス海、世界最大の海洋保護区に─その本当の意味

パラオの海洋保護区で思い出したが、海洋保護区とは何か、森下丈二東京海洋大学教授の記事が紹介されているという。(森下丈二氏ー捕鯨交渉官で世界的に有名だ。勝川先生のいる東京海洋大学に行かれたと知らなかった。)

 

「南極ロス海、世界最大の海洋保護区に─その本当の意味」

第403号(2017.05.20 発行)

https://www.spf.org/opri-j/projects/information/newsletter/backnumber/2017/403_1.html

 

海洋保護区に対する世界の大きな誤解が説明されている。パラオ政府始め、多くの政府(日本を含む)や、海洋・環境関係者、特にNGOが誤解している事である。

 

「注目すべきは、いずれも漁業の全面禁止などといった概念は含まず、「周辺よりも高度に保護」されるという表現で保護の度合いには柔軟性が存在するということである。」

 

パラオの80%漁業禁止や、キリバスのフェニックス諸島海洋保護区がどれほど特殊な事例か。あれは英国海洋科学者グレッグ・ストーンが提案した金融商品なのである。(だからセレブやモナコが寄って来る)

 

これは南極ロス海に設定された世界最大の海洋保護区(MPA)も同様で、その細かな取り決めも説明されているが、当方がそうだ!その通り!と思わず叫んだのは下記の点である。

 

「MPAの設立はその数値目標などからゴールであると位置付けられがちであるが、正当なMPAとは海洋生態系の保存と管理に向けてのスタートである。」

 

MPA、海洋保護区は目的ではなく、手段なのだ。

何のための手段?

海洋生態系の保存と管理のためであって「手つかず」の自然を守ること、それ自体ではない!

このMPAは手段である、という事をパラオ政府には何度もアドバイスしたがわからなかったらしい。私以外、そんな事を言う人はいなかったようである。

そりゃそうだ。パラオの海洋保護区は科学データとは一切関係のない、信託基金,新たな金融商品でしかないからだ。パラオ海洋保護区法案を見ればそのことが良くわかる。