やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「島の国際法上の地位」山本草二(自分用メモ)

『国際行政法の存立基盤』(山本草二著、有斐閣社、2016年)に収められている「島の国際法上の地位」を再読。

2013年に亡くなられた山本草二先生にお会いすることも教えをいただくこともなかったが、宇宙法や国際通信法もカバーされているようだ。私の一つ目の博論は通信で、開発論だから国際法には触れていないが、山本先生の通信関係の論文も時間を作って読んでみたい。通信分野も、島嶼国はじめ、脱植民地化の動き、すなわち開発イデオロギーと資源イデオロギーと関係しているはずだ。もしかしたら山本先生はその視点で議論されているかもしれない。

さて、前回も気になった箇所だが、「島の国際法上の地位」の436頁にある、民族自決権と島の定義の議論。アフリカ14カ国とラ米19カ国が大陸棚や経済水域がその島の住民に帰属し、現地の支配権力はこの権利を行使できないという主張に、なんとニュージーランドが具体的な対抗する理論展開をしている。即ち、「現地の統治権力の援助・支持なくして住民による海洋資源の開発と利用は不可能である以上、むしろ島周辺海域に対する権利の取得はみとめたうえで、その資源の利用と配分について合理的な利益が保証されるよう(以下略)」(436頁)

このニュージーランドの指摘は重要な気がするし、この指摘に太平洋島嶼国はどのように反応したのであろう?

この箇所こそ、自決・開発・資源イデオロギーの対抗軸、もしくは入り身の術的な視点ではないだろうか?

豊富な資源を持った途上国が悲惨な社会になった例はいくらでもあるが、豊かになった例はあるだろうか?例えばブルネイか?あそこはシェル石油がいるし。。

パプアニューギニアは国家予算10年の天然資源の権利料を得たとニュースで読んだ記憶があるが、国家の福祉・教育は改善されているのであろうか?

天然資源が国家を豊かに人々を幸せにする、とは思えないのだ。。