やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

キリバスフェリー事故捜索終了 犠牲者は81人か

先週からニュージーランド、オーストラリア、米国の国際協力で行われていたフェリー遭難捜索が終了した。

Kiribati suspends aerial search for sunken ferry passengers http://www.radionz.co.nz/international/pacific-news/349471/kiribati-suspends-aerial-search-for-sunken-ferry-passengers

乗船88人のうち救助されたのは7人のみ。 81名が犠牲となった、という事か。 捜索活動を行っていたニュージーランド政府への通達はフィジーのナンディにあるRescue Coordinations Centreから連絡があったという。キリバス(そして多分ツバルも)救助活動の司令塔がフィジーにある、という事か。

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写真はMaritimeNZのツイッターから。フィジーかニュージーランドのRescue Coordination Center

今回の事故は、プロの分析が出て来るのを待ちたいが、ニュースで確認できた事を書いておく。 ・まずはフェリーが行方不明になってから捜索活動が始まるまで1週間がかかった。 ・船の運航に基本的な安全装置などの確認ができていなかった。 ・誰の船かもまだニュースには出ていない。 ・フェリーが出発した離島のノヌティ島の通信事情は悪い。 ・ニュージーランド・豪州・米の協力体制が組まれている。

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MaritimeNZのツイッターから。ニュージーランド・豪州・米が捜索を担当する海域

実は、太平洋を30年もやっているとわかることなのだが、海上で遭難しても放っておかれるケースが多い。今回たまたまニュースになった、という事かもしれない。 なぜ、通報しないのか? まず離島の場合は通信事情が悪い。 仮に通報して、今回のようにニュージーランドなど専門チームが知れば基本的安全装置設置不備が表沙汰になる。即ち行政管理ができていない。行政の責任が問われる。通報すべき行政部署が自らクビを絞める事になる。(キリバスのタバイ初代大統領の指摘にもある) 結果、多くの遭難ケースで海の藻くずと消える。誰も助けない。 これは悪い意味の太平洋島嶼国の伝統か。 ところで、本件の関係ないが中国の軍隊がニュージーランドのRCCを訪問との情報が、このニュースを追っている中であった。 島サミットを控える日本ができる事。 中国を見習ってまずはニュージーランド、フィジーなどのRCC(Rescue Coordination Centre)の現状を確認し、将来協力できる分野を早急に協議する事、ではないか。これぞインド太平洋オペレーション。

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MaritimeNZのツイッターから。ニュージーランドのRCC(Rescue Coordination Centre)を訪問する中国軍