やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著(読書メモ)その6

自分用のメモで書いているのだが、読んでくださっている方が結構いて、少しは役に立っているんだなあ、と思うと勉強する気が湧いてくる。肝心の海洋生物多様性は明日にして、今日中に2、3章読み込みたい。 といっても気になった箇所を書き出しているだけなのです。

『国際海洋法の現代的形成』田中則夫著の「第2部深海底制度の成立と展開」にある第3章「大陸棚の定義と限界画定の課題 ー トルーマン宣言から国連海洋法条約へ ー」p. 73-99

p. 73 大陸棚は、地理学や地質学においては、海岸から沖合に向け水深が急に増大する手前までの、傾斜が比較的緩やかな海底地形をいう。(この説明覚えておこう!この前国会議員に聞かれて答えられなかった。)

p. 74 1945年ころ、領海の幅は国際的に統一されていなかった! アメリカが開発の対象とした大陸棚は、領海を超えた公海の下の海域区域にあった。なのでトルーマン宣言が必要だったわけか。

p.74 トルーマン宣言で、諸外国が同様な行動をとり、海洋秩序が混乱。事態収拾のため1958年に採択されたのが大陸棚条約。米国、世界秩序を壊す。

p.75 大陸棚が200カイリ内の場合は200カイリまでを大陸棚。ってこれすごい解釈ではない? ここが科学ではなく法的理解、なのであろう。UNCLOS76条1項。これがEEZ200カイリにつながる。

p.76 トルーマン宣言は公海上に一方的に設定される保存水域に置いて第3国の漁業の自由を認めていないとは明言していない。むしろ、当該水域において操業してきた外国があれば、相互協議で漁業規制を行い公海の性格を確保していた。(多分それをしたら別の場所で米国がしっぺ返しされるのではないか)

p. 76 それでもやはり トルーマン宣言は沿岸国の管轄権を領海外に拡張することを意図し、諸外国が類似の宣言を行って、一方的に自国の漁業管轄権を領海外に拡張するきっかけを与えた。(これは韓国のことではないか?)

p. 78-79 チリ、ペルー、コスタリカエルサルバドルエクアドルなどのラテンアメリカ諸国が独自の国内法制定を通じて200カイリの管轄権を主張していた。これらも国は沿岸沖合に浅い海を有していない、すなわち大陸棚がない、もしくは小さい国に不公平。これは太平洋島嶼国も同じだ。

p. 82 大陸棚定義に関する中心的議論はEEZと大陸棚の範囲を一致させることになる200カイリという距離基準の設定。(EEZ200カイリは、元はと言えばトルーマン宣言のせいではないか)

p. 84 沿岸沖の海底の地形は決して単純ではなく。。(そーだろうな。やっぱりトルーマン宣言って罪深い)

p. 89 UNCLOS76条の大陸棚の規定は地質学の知識がないと理解しにくい。(ここ重要だと思う。多くの途上国には地質学者はいないはずだ。であれば外国の支援を受ける。そのためにはお金が必要。そうすると政治カードに利用されたり、汚職につながる)

p. 93 大陸棚限界委員会CLCS の限界。 CLCSは化学的な判断を行う機関で国家間紛争は扱わない。同委員会の勧告が紛争に影響を及ぼしていけない、とされているが、実際には。。

p. 94 からはロシアの大陸棚申請を例に解説している。ロシアが申請した後に日本始め関係国が国連事務総長に対し通告している。

p. 96 国際法上、紛争とは何か、は国によって受け止め方が違う。日本にとって尖閣諸島は紛争ではないが中国にとっては紛争。ロシアは北方4島を紛争と認識していないかもしれないが日本にとっては紛争。

p. 97 CLCSは紛争に関与しないと言いつつ、紛争当事国の一方の立場を前提にしているケースがある。そしてロシアのケースでは、日本他の国が出した通報がCLCSの勧告に影響を与えている。

p. 96 本来科学的知見に基づいて非政治的判断が行われるCLCSは、法律家の集まりではなく、紛争が関係する状況を適切に判断できない性格の機関である。

大陸棚問題は、地質学、地理学の観点からは理解できない法律上の定義が含まれている。

これ、すなわち、BBNJ議論の科学の部分と政治の部分の動きの絡みをよく見る必要がある、ということでは?