やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

読書メモ『米中もし戦わば』ピーター・ナヴァロ

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 『米中もし戦わば』ピーター・ナヴァロ この本が話題になっていたのは知っていたが 評論家の江崎氏が44章だけでも読め!と力説されていたので手にとった。 それに同志社大学の浅野亮教授の中国の授業が面白いのだ。

私が2008年に立ち上げて、進めて来たミクロネシア海上保安事業の様々な出来事と、米中そして北朝鮮イランの動きが全部繋がっていることがわかった。改めてあの事業が、国交省の利権だけになっていけないことを痛感している。もっと広い視点で太平洋の、世界の安全保障、地政学を見ていかなければならない。

『米中もし戦わば』は想像や予想ではなく、実際に中国が何をしているのか、実例を上げながら中国の脅威を説明してくれている。サイバー戦、情報戦、海洋法の独自解釈。線を引いて読みたい本だが図書館で借りたので、買おうかどうか迷っている。 トランプ政権になってオーストラリア政府始め世界中が中国に対し警戒感を高めているの今こそ読まれるべきではないか?

浅野先生の授業で使用している教材が梅本哲也氏の『米中戦略関係』なのだがこれも息をのむようなリアリズムの世界。米国研究でこのような立場は珍しいのだそうである。 中国は太平洋に進出しやすいように、北朝鮮を使ってイランの核開発を支援し、米国の関心を中東に向けた。ミクロネシア海上保安事業はまさに空白になった太平洋の安全保障上の布石だったのだ。しかも民間の。いや民間だったからこそできたのであろう。

2008年は豪州が太平洋の監視支援を見直し、海軍はもうやめたい、魚を追うのは海軍の仕事ではない、と言っていた。この豪州の姿勢を変えたのが笹川平和財団であった。現在の豪州の対中国の姿勢を見ると結果的によかったのだ。

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米軍で中国の脅威を語って更迭されたファネル大佐にこの本は捧げられている。

ピーター・ナヴァロが参照していたミアシャイマーの下記の論文も読んでみたい。中国の覇権、進出は平和をもたらさないのだ。太平洋島嶼国は? Mearsheimer, John J. (April 2006). "China's Unpeaceful Rise" (PDF). Current History. China and East Asia. Current History Magazine. 105 (690): 160–162. http://mearsheimer.uchicago.edu/pdfs/A0051.pdf