安倍政権で進められているのが水産改革だ。
戦後の日本の漁業体制、ステータスクオを変革しようという大きな動きである。
専門分野でも研究対象でもないのだが、海洋法と大きく関わってくる。
気になっていたのだが、神戸で説明会があるというので台湾のY博士と傍聴した。
会場は、多分漁師さん、水産業関係の方で満席であった。
「(水産庁の)デスクワークだからこんなのしか作れないんだよ。」
「資源管理をすれば漁業が成り立つと(普通の人は)誤解する。もう漁師は資源管理とっくいやっているんだ。」
「漁協改革って、民間が新たに参入することが当たり前だと思われた困る。」
メディアには出て来ない本音の声が聞けただけでも神戸に足を伸ばしてよかった。
私も質問した。
「島サミットで太平洋の違法操業取り締まりを日本が支援すると合意されましたが、水産庁は現在パラオEEZで実施している取締船派遣を拡大しないのですか?」
答えは「検討します。」
これお役所の答えとしては花丸レベルだ。文書にもなっていることを教えてくれた。
「また、我が国EEZ内の取組の強化と並行して、関係国と共通に利用する水産資源については、二 国間協定・地域漁業管理機関など国際的な枠組みを通じて資源管理を徹底するとともに、漁業取締体 制を強化する。」
水産政策の改革について
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/attach/pdf/suisankaikaku-3.pdf
それから配られた資料の中で興味深い表があった。
漁業者一人当たりの生産量:ノルウェー241.5トン、日本27.5 そして中国が5.4トン。
漁船一隻あたりの生産量:ノルウェー637.9トン、日本31.1 そして中国が71.5トン。
これから少子化もあり日本の漁業者数は減って行くことが予想される。そうするとノルウェーのような効率の高い漁業体制が必要になってくるのかもしれない。また中国が漁業者一人当たりの生産量が極端に少ないのに漁船の生産量は日本の倍だ。中国の漁船が(多分大型漁船を造船し)効率が良いことが想像される。
一緒に傍聴した台湾のY博士が説明をしてくれた。中国南海岸の漁業は、台湾の高雄辺りから流れてきた漁民が多い。そうすると親族経営で小さな船に何人も漁師が乗る。それでみんなが食っていけるからいいのだそうだ。「資源管理は?」と聞こうと思ったが止めておいた。
欧米主導の資源管理と日本の漁師さんたちの間に立つ、水産庁の役人に同情してしまった説明会だった。水産庁作ったの国会議員をしていたおじさんだ。足を引っ張ったのは造船利権を持っていた運輸省。今でもその構図は変わらない。