やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

『日本占領と「敗戦革命」の危機』江崎道朗著ー6章から10章「昭和天皇の反撃」

                f:id:yashinominews:20180825111304j:plain

江崎先生の新刊『日本占領と「敗戦革命」の危機』一章ずつ読んでメモを書いてきた。残りの6章から10章、旅先の舞鶴で読んだ。北海道行きのフェリーは夜中発なのだ。時間はたっぷりあった。

読み進めるうちに、ここ舞鶴でこの本を読んでいる奇遇に驚いた。

舞鶴で最初に訪ねたのが「引揚者記念博物館」。私はソ連に連行された抑留者の件はあまり知らない。展示物や写真、文章は見ているだけで胸がつまり、涙が出てくる。しかし、江崎先生の本にある「洗脳」を知る資料は少ない。

一点だけあったのは現地で作成された日本語の新聞。「スターリン大元帥の誕生日を祝う」と大きな見出しがある新聞だ(撮影禁止だったのでうろ覚え)。連行され、強制労働させられた上に、プロパガンダを受け、洗脳までされたのだ。

GHQは、ソ連で洗脳された日本人が敗戦革命をしようとしている事に気付き、ここ舞鶴に引き揚げて来るソ連帰りの抑留者をチェックしていた。その資料はないだろうか?

日本の共産主義の洗脳の実態は、ソ連の崩壊即ち90年代をそしてヴェノア文書を待つ必要があったようだ。

圧巻は第8章の「昭和天皇の反撃」である。日本人にとって天皇の存在は、ヒトラームッソリーニとは全く違うのだ。それをGHQ は、米国は、もしくは欧米人は理解できない。ヒトラーが自決し、ムッソリーニがピアノ線で吊るし上げ殺されたのとは反対に、日本国民は共産党員まで天皇の巡幸を歓声をあげて歓迎する。天皇制と民主主義は共存してきたのだ。日本には「自由」という言葉が必要ないほど自由で平等な社会があったのだ。江崎氏は GHQ+野坂参三+右左の全体主義者 vs 昭和天皇+少数の保守自由主義者 の構図を示す。昭和天皇の役割がここまで強調された記述は初めて読む。ジュネーブ国際連盟から帰国した新渡戸を呼び意見を聞いた昭和天皇。戦後新渡戸の弟子である矢内原を呼び新渡戸について進講をさせた昭和天皇。新渡戸ファンの私は、昭和天皇の影に新渡戸を見てしまう。

他に、個人的にはベアタ・シロタが共産主義であったのかどうか気になる。江崎先生の本にはその事を匂わす記述しかない。彼女は単に日本に残ったピアニストの父親(リストの再来と言われるほどの天才)と母親を探しに来ただけではないか、と素人考えをしている。天皇家は戦後、積極的に西洋音楽に親しんでいる。これは何を意味するのであろう?

以前書いた『日本占領と「敗戦革命」の危機』のメモ

yashinominews.hatenablog.com

yashinominews.hatenablog.com

yashinominews.hatenablog.com

yashinominews.hatenablog.com

yashinominews.hatenablog.com