(大日本の防衛力・世界的地位・将来)
1908−1909年、日本(京都泉涌寺近辺)滞在で書いた報告書(15本)をまとめたもの。
和訳は昭和17年2月15日発行 洛陽書院 東京小石川 若井林一訳
京都府立図書館に持出し禁止図書として収蔵してある。「寄贈 財団法人和風会殿 昭和47年3月31日」 の押印あり。
凡例に 「原著者の真意には何等疑うべきものはないが誤解、曲解のため迷惑の著者に及ぶと思はれる数カ所合計十数行は省略した。」とある。一体何を省略したのであろう?
下巻はあるのだろうか?英訳は??
ハウスホーファーが日本に来たのは日露戦争で日本が勝利した背景があるであろうから、英米仏なども同様な関心を日本に持った筈である。
原著者序の13頁に「従って斯かる判断も所詮は私の視察中の幸福な数年間の思い出、美しい数々の一生の思い出と堅く結びついた日本なる国土への熱愛が書かしめたものであることも知って貰へると思ふ。」 とある。やはりハウスホーファーの日本滞在は良い印象を与えたのだ。
目次
第一章 戦争と戦勝に於ける幻想と現実
第二章 日本の国防力の地理的基礎
第三章 日本国防力の社会的基礎
第四章 日本国防力の社会的基礎
第五章 過渡期の個人、家族、国家
第六章 戦争による経済的逼迫の増大
第七章 生産力の増大
第八章 水上のパン — 海の漁獲
第十章 勝利の交通政策的整備
第十一章 新地域
第十二章 防衛外堡か 前哨堡壘か
今日は二章しか読めなかった。興味深かった箇所をメモしました。
36頁 然るに幸いにして日本は、戦いに強き国民を育成するために、当然数百年の鍛錬を要するが如き充分な意思と心情の力を予め持ち合わせていた。戦争行動に対しての人格的なるもの、永遠不変のもの、従って模範的なもの一切を持ち合わせていた。
38頁 日本の国民にこの驚異的な変革をなさしめ得た種々の民族性はまず第一にマレー的要素、蒙古的要素、及びアイヌ的要素の間の極めて好都合な混血に原因する。
48頁 又彼等が命令されない場合にもよく清潔を保つことに努力するのを見て、私は少なからず驚いたものであった。例えば、私はかつて竹林と河川湿地の間に野営した大隊で、ある寒い11月の夜、兵隊が営々と水や木を運んでは天幕の後ろで互いに洗いあったり湯を濯ぎあったりしているのを見たことがある。… 日本では中隊毎に洗濯場と浴室を持っている。… 満州戦線に於ける、或いは其の後の平時演習の日本軍を見たものは、一つ一つの戦具が、否、その小部分に至るまで如何に巧みに地形に適応させてあるかを見て驚いたに違いない。そのことは陣地構築の巧妙な擬装、防御物設定、等に於いて背景の色、光等に至るまで無数の細部に亘って現れている。
参考資料
THE DAEMON OF GEOPOLITICS: KARL HAUSHOFER, RUDOLF HESS AND ADOLF HITLER Holger H. Herwig University of Calgary