やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

軍服を着る市民たち―ドイツ軍国主義の社会史(メモ)

 

「軍服を着る市民たち―ドイツ軍国主義の社会史」 (有斐閣選書、1983、望田 幸男)

読みたい本である。

相変わらず日本での自衛隊に対する反発は強い。多摩大学,大東文化大学で続いて自衛隊の展示会が「地元市民」の反対で中止になったとTWで知った。

近現代史を少し知ると、戦前の軍縮で職を失った10万人の兵士と大衆の軍人に対する冷かな態度があの2.26や、軍部の暴走を招いた背景で、明らかに大衆に市民に大きな責任がある事に衝撃を受ける。

現代の世界で自衛隊に反感を示す市民は歴史を学ばないのか、また悲惨な戦争を起こしたいと思っているのか、としか思えない。

という私も自虐史観の教育を受けて自衛隊はコワイ、と思っていたが2008年からミクロネシア海上保安を立上げ、担当する中で米豪の軍人、そして日本の自衛隊の方とも接する機会が多くなった。

笹川平和財団に出入りする国交省・海保のおじさん、おにいさん からさんざんセクハラ・パワハラを受けた経験から、海上自衛隊の方達が白馬の王子様のようにキラキラ見えるのだ。セクハラ・パワハラなんかしない。優しい。防衛大学教授だった平間洋一先生なんかは知性だけでなくダンディで、カッコイイ、とミーハーで申し訳ありません。

さらに、当方の指導教官坂元茂樹教授は積極的に防衛省、海保の職員に大学院での教育の機会を提供されている。同級生に自衛隊の方がいて、色々内情も聞けて興味深い。

 

ドイツでは軍人がどのように扱われているのか、呟いたところ、早速この本を教えていただいた。まだ手にしていないが書評があった。

http://www.geocities.jp/ishidanz/09_03_18.htm

もう終了してしまったブログのようなのでコピペしておきます。

◎私の暮らす老人ホーム「新生会」には、毎年ドイツ人の青年がやってくる。彼らは兵役を忌避してその代わり一年間のボランテア活動をする。小田実氏がドイツ在住中に立ち上げた日独協会があり、そこを通して日本を働き場所として選んでくるのである。
 彼らによって「ドイツの徴兵制度」に興味を持っていたのだが、今回、東京新聞に「ドイツ軍・制服を着た『市民』」という特集が連載された。  私には「徴兵制の軍隊」としては「旧日本軍」というイメージしかなく、悪いものという先入観しかなかった。日本やアメリカの「志願制の軍隊」が、貧困青年のたまり場として利用されている現状を知らないわけではなかったが、この連載を見て目から鱗の感があった。
 アメリカや日本の兵隊の「自殺率」の高さを知っていたが、ドイツの軍隊のそれは非常に低い。その理由を考える必要があろう。
 特に、2.の造反も可の項、軍隊の「命令に服従」が、ナチに利用されたという反省から「良心優先」を説く、日本とは別世界の感がある。
 ご一読を!

1.人権守るオンブズマン
2.良心優先「造反も可」
3.兵士の「労働組合」デモ辞さず


東京新聞・国際:09/03/11~12
ドイツ軍・制服を着た「市民」

1.人権守るオンブズマン
      世間の常識 統制の要


 迷彩服の将校が黒いコート姿の男性を案内する。ドイツ中部エアフルトの独連邦睦軍第三八三指揮支援大隊本部。独連邦議会(下院)が任命した軍事オンブズマン(防衛監察委員)、ラインホルト・ロッベ氏が同隊への巡察を実施した。
 通信業務を担う同隊は、アフガニスタンなど独軍が派遣される世界各地に隊員を送る。
 基地を一巡しながらロッベ氏は若い兵士たちに声をかける。一人の兵士が進み出た。「米軍や仏軍は派遣先でも独白の携帯電話システムかあるのに、われわれは現他の携帯店で買います。高いのに、つながりにくいのです」。「それじゃ家族との連絡も不便だね」。ロッベ氏は答える。
 軍事オンブズマンのロッベ氏は五十人の専属スタッフを抱え、通告なしで国内、国外にある軍の全施設に立ち入る権限を持つ。
 兵士から直接寄せられる年六千件の通報に対応し、昨年は七十施設を訪ねた。セクハラの訴えを放置したり、部下の持病をからかった士官は昇任停止などの処分を受けた。同僚に「ジーク・ハイル](勝利万歳)とナチス式挨拶を送った兵士は除隊処分に。
 昨年六月にはアフガン派遣部隊を訪ねている。危険だと渋る現地司令官を押し切っての調査だった。北大西洋条約機構(NATO)の基地に駐留する兵士はロケット弾から身を守る壕も与えられずに任務に就いていた。ロベツ氏は直ちに改善を勧告した。
 兵士の人権に議会の代表が目を光らせることで軍のコントロールを図る。軍の組織に風穴をあけ、内部の実態を明らかにすることが狙いだ。「大事なことは、軍を世間の常識から離れさせないこと。兵士は『制服を善た市民』というのがドイツの考え方だからだ」とロッベ氏は言う。
 市民としての常識を軍統制の要とする効果は自殺率に表れる。国外活動で犠牲者を出しているが、兵士の自殺率はドイツ平均の五分の一以下。日本の自衛隊が海外活動での犠牲はセロなのに、多発する自殺に悩んでいるのとは対照的だ。
 徴兵制のドイツと志願制の自衛隊では背景が異なる。だがロッベ氏は言う。「徴兵制では普通の市民が軍に入ってくるが、志願制では偏り、組織が不透明になりやすい。オンブズマンは志願制にこそ重要な制度だ」(エアフルトで、三浦耕崔)
   × ×
 第二次世界大戦での敗戦から六十数年を経て、軍の国外活動を定首させたドイツ。任務が拡大する軍をどう統制しているのか、ドイツの手法を探った。

2.良心優先「造反も可」
      兵士必須の「内面指導」


 スクリーンに「任務」「良心」と害かれた二つの円が現れた。「これが重ならないとき、命令に従う必要はない」。ドイツ西部コブレンツにある独連邦軍「内面指導センターでは、国外派遣を控えた士官らへの研修が行われていた。
 一週間の研修は、殉職した際の社会保障の説明で始まる。続いて教官は迫害を書くよう勧める。「普段でも事故で死ぬこともある。自分の死を思えば、任務に対『何故』と真剣に問える」と、教官のペステル中佐。
 「何故」を問うことで任務を自身の良心と照らし合わせる。ドイツ軍はこれを「内面指導」として兵士必須の資質とした。
 ヒトラーの命令に従い、軍が利用された教訓から、良心に反する命令に抵抗する権利を認めたのだ。ドイツの軍人法は人間の尊厳を冒したり、犯罪となりうる命令への服従を禁じる。ヒトラー暗殺を試みて処刑された旧国防軍のシュタウフェンベルク大佐は、今や全兵士の模範とされる。
 実際、兵士は時として命令に反する。二〇〇七年三月、ドイツ政府がアフガニスタンヘの偵察機の遣加派遣を決めたのに対し、国外派遣の後方支援担当だった中佐が任務を拒否。

 「偵察機派遣はブッシュ大統領による〝十字軍〟への手助けになる」と政府を批判した。

 兵士は政治への口出しを慎み、命令に従順であるべきではないのか。そう問うと内面指導センター長のバッハ准将は答えた。「まさに、そういう考え方で旧軍はナチスに利用された。それに兵士に求められる資質も大きく変化している」
 教官のモルベ大佐が解説する。「軍が国家間の戦争に備えた冷戦以前には、戦場での敵は明確で、兵士は命令に従えばよかった。だが、一九九○年代以降の国外活動では現地情勢は複雑だ。向かってくる人間が敵か味方かもはっきりしない。判断は一瞬で、事前の命令通りに行かないかもしれない。その時の情勢と良心から兵士自身が考える必要がある」 しかし、兵士が正しく判断できるとは限らない。昨年八月、アフガン北部の検問所で、独軍兵士が民間人の車に発砲、女性一人と子ども二人を殺害した。警告発砲でも車が停止しなかったため車体を撃ち抜いたという。兵士はドイツに戻され刑事裁判を待つ身だ。
 「任務はますます難しくなっている。現代の兵士は時として政治家であり、外交官でなければならないのだから」。バッハ准将はそう例えた。

3.兵士の「労働組合」 待遇改善 デモ辞さず

 ドイツの軍隊には兵士を代表して政府に待遇改善を求める「連邦軍協会(労働組合)」がある。協会は旧西ドイツが再軍備した翌年(一九五六年)、会員五五人で発足したが、今では約二二万人を数える組織へと拡大した。
 要求実現のために、デモもできる。それはは、基本法(憲法)に基づいて、兵士も一般市民と同じ権利があるとの意識が浸透しているためだ。
 「隊舎への居住義務などの制約はあるが、兵士も市民だ。基本法で保障する『結社の自由』は兵士にもある。基本法こそ、われわれの根源だ」。そう言うキルシュ中佐は、基本法の豆本を常に携帯している。
 兵士が一般市民と同じ目線で声を上げる。

 キルシュ中佐は話した。「もし協会(組合)が存在しなかったら、兵士は疲れ切り、国外活動は非常に困難なものになっていただろう」と。