やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

それでもアーダーン首相は偽善者だ

 ニュージーランドのアーダーン首相が偽善者だ、人道主義者とは思えないとブログに書いたら、豪州のことを何も知らない、在ニュージーランドの知ったかぶりおじさん絡まれた。絡んでもいいよ、批判してもいいよ。きちんと実証しなさいよ。それが議論の礼儀だろ?もし感想で反論したいんなら、そう言えばいいではないか。
 私がオーストラリアの難民の事を知ることになったきっかけはミクロネシア海上保安事業である。豪州海軍が支援する太平洋パトロール事業。ほとんど役に立っていないし、豪州海軍もやる気ゼロ。日本が出て来たから慌てて俺らの縄張りだぞ、と急にやる気になっただけ。これ本当です。目の前で見て来たんだから。
 なぜ豪州海軍やる気ないのか?色々理由はありますがその一つが本国での不法難民対策。豪州の広大な沿岸警備。とても1万強の人員では対応できない。豪州海軍海外にもPKO始め少ない人数なのに海外にも派遣されている。よって開発が遅れ、人口が少ない北部豪州はほとんど警備がされていないのだ。そこにインドネシア経由で難民がどんどんやってくる。一時は年間4千人以上。正規難民ではない。不法難民である。
 甘い顔をすればどんどん不法難民がやってくる。それでジョン・ハワードが取った手法がマヌス島など太平洋の離島に拘留する事だ。彼らの受け入れを巡って、トランプ大統領が電話を切った例の件だ。米国も受け入れる話がオバマ政権の時に進んでいた。
 そこにアーダーン首相がしゃしゃり出て、ニュージーランドが受け入れると。しかし、繰り返すが、ニュージーランドが受け入れた難民、移民は結局職がある、また難民コミュニティのあるオーストラリアに渡ってしまう。そうでなければ、なぜ不法移民はニュージーランドを目指さず、オーストラリアを目指すのか?
 不法難民が必ずしも弱者であるとは限らないのだ。税金逃れ、怪しい越境ビジネス経営者等々であることもオーストラリア人は知っている。難民を抱えるということは税金を払い、社会に不安をもたらすことにもなる。
 今回のテロリスト、タラントはオーストラリアから来たが、彼を多分まだ10代のニュージーランド白人至上主義者が支援した事も忘れてはならない。
 浅川 晃広さんが移民、難民問題を色々書いている。以前読ませていただいた。この議論をするのに必須の資料だ。
 オーストラリアの移民政策と不法入国者問題―「パシフィック・ソリューション」を中心に―