やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

チャゴス判決(2)虎八は中共のスパイ?

 虎ノ門ニュースは、恩人の江崎道朗教授(拓殖大学)も最近よく出演されているし、有本香さんという女性ジャーナリストが気炎を上げていていつも元気をいただいている。ながら見だが、よく拝見させていただいている。

 先日、私が2つ目の博論で、指導教官坂元茂樹教授の指示で急遽取り上げることとなったチャゴス判決のことを、武田邦彦工学博士と評論家須田慎一郎氏がまるで中共のスパイではないかと思うようなコメントをされていたので目が点になってしまった。

youtu.be

30分辺りからである。

 そもそも、チャゴスにある米軍の存在を脅かす判決である。インド太平洋の海洋安全保障上打撃的な判決だ。私はモーリシャス政府やそれを支援したアフリカ連合の背後には絶対中共がいると想像している。

 2番目に、この裁判、肝心のチャゴスの人々が二の次で、チャゴスと関係のないモーリシャス国民が訴えていることだ。モーリシャス政府が欲しいのはチャゴスに既にある米軍権益なのである。チャゴスが自分のものになれば直接米国と交渉し、土地使用料など経済的利益が確保できる。

 3番目に須田慎一郎さんは国際政治やと途上国問題、ましてや赤い国連と言われる程腐敗が進む組織の事をご存知ないのではないか?今回の国連決議は小国の数の力で押し切ってしまったのだ。そこにはなんの客観的議論もない!それを日本が戦争をした事の勝利であるかのように解説するのは英霊への冒涜である。戦後独立した途上国が、特に小島嶼国がどれほど苦しんでいるのかご存知ないのであろう。

 

 さて、こうやって勢い良く書ける私も、2つ目の博論のテーマとなったチャゴス判決に真剣に向き合うようになったからであって、これも坂元茂樹教授のご指導の結果である。(但し私の言動は私個人の責任である。)

 郵便学者内藤陽介先生も指摘されていたが、チャゴスがモーリシャスに戻った場合米軍基地はどうなるか、が一番の疑問であった。

 先日エジンバラ大学文化人類学者のLaura Jeffery博士の論文を、実は文化人類学者という事で期待しないで読んだところその詳細が、答えが書いてあった。それが上記に2点目である。要はモーリシャス政府がチャゴスにある米軍の経済的権益を望んでいるのだ。中国がモーリシャス政府の背後にいればまさに「敵」を用いる戦法となる。そして何よりチャゴスに住んでいいなかったモーリシャス国民の利益が優先される可能性がある。

Laura Jeffery博士はチャゴス問題を20年近く研究されている。隅々までご存知なのであろう。

 チャゴス判決は、単純に白黒でかたずけられる話ではない。その中で一番重要なのは島を追われたチャゴスの人々である。まず彼らを理解せずにこの判決は議論できない。