やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

「なぜアメリカに社会主義はあるか」永井陽之助1966

f:id:yashinominews:20200407084806j:plain ゼミで自己紹介をしたら「笹川かあ」と言われたのを覚えています。
 4月1日に中国が国連人権理事会のパネルに任命されたことがツイッターで少し騒がれていて国連における人権と自決権に言及している草間秀三郎氏の論文を思い出し、再読した。

「ロシア革命とウィルソン主義」 草間 秀三郎、アメリカ研究 / 1993 巻 (1993) 27 号 

 

 国連人権理事会とは何か。

 国際連盟設立を巡るウィルソンとレーニンから見ていく必要があるのだ。そして人権とは何かをお花畑の議論ではなく、フランス革命、アメリカの独立革命のあたりから見ていく必要があるし、何よりも1949年に猪木正道氏と五十嵐豊作氏が同時に和訳したローレンツ・フォン・シュタインの自由論も重要だと思う。(話がそれるので括弧書きにするが、シュタインの自由論はアマルティア・センの開発論と同じ議論であることにまだ驚いている)
 実は私が今取り組んでいる2つ目博論の論理枠組みは自決権で人権は深ーく関係している。

 

 隔離生活の中で読書計画を壊す資料に出会ってしまった。この草間論文で引用されている。著者名を見て読まないわけに行かない。永井陽之助先生だ。私は1997年に青学に入学し2つ目の修士論文を国際政治で書き上げた。一つ目の修論は教育学である。

 なぜ青山だったのか?渡辺昭夫先生がいたからだ。そこでとんでもないボーナスが待っていた。永井陽之助先生である。実はお名前もその御業績も知らずゼミに参加させていただいたのだ。ここで小国の意味を理論的に理解、考えられるようになった。

 

 さて草間先生が引用されてているのが「なぜアメリカに社会主義はあるか」年報政治学 / 17 巻 (1966) / ウェブでアクセスできる。

 かなり重厚で長い。米国の背景を知らないと難しい。しかも注の記述量が多く、プリントして後で読もうと思ったが少し目を通した後気になってこの2日間読んでいる。アメリカにいかに共産主義が浸透してきたか。当時の知識人たちはロシア革命を支持していたのだ。それもかなり素朴に。現場の認識を欠いて、自己中心的に。。

 米国の独立革命の時のアメリカとウィルソンの頃のアメリカはまず人口構成員が違う。東欧、ドイツ、イタリアなどから多くの移民が占めている。米国の共産主義のイデオロギーが排日、反日を作る要因であったのならばその仕組みを理解しておく意味はあるであろう。

 色々気になった箇所があるが永井は「巨大なアメリカニズムのブルータルな膨張欲の「見えざる手」」というドワイト・マクドナルドの表現を引用している。ここはアメリカニズムを中華思想に変えて読んでも誰もが納得しそうである。

 ウィルソンに、またその後の政権にも影響を与えてきたウォルター・リップマンも登場する。彼が自決権を the nation of villagers と表現し、革新主義のモラリズムを国際関係に投射した。これが平和の14カ条に入るのであろう。

 これから読む「五終わりに」の文は次の文章で始まる。

「かつて、その創始者の反対の主張にもかかわらず、ブルジョア啓蒙思想の線に沿ったユートピア思潮の一支流であったマルクス主義的社会主義は、資本主義と同様に一箇のイデオロギーに転化し、無自覚で無拘束なメシア的使命観と、冷厳な「国家理性」の野合は、恐るべきスターリン主義の鬼子を生み落とした」 内容も文章が難解である。誰か批評を書いていないだろうか?