やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

白石隆著「海の帝国」アダム・スミス、ラッフルズ

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ラッフルズホテルとラッフルズは関係ないのだが、死ぬまでに一度は泊まってみたい。

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白石隆著「海の帝国」は、ミクロネシア海上保安事業を2008年に立ち上げる時に、どのようなコンセプトで事業を進めればよいか、模索していた時に出会った本である。

 

「インド太平洋開拓」の本を書く中で、太平洋を最初に分割したのがポルトガル、スペインでその経線がパプアニューギニアに残っていることを書こうと、いろいろ根拠となる資料を読んでいたら、モルッカ諸島、ティドレのサルタン、サイフディンに出逢ってしまった。彼がパプアまで勢力を拡大し、それをオランダが引継ぎ、英国が東からやって来る中で、トルデシャス条約を根拠にパプアニューギニアを縦に真っ二つに切ったのだ。

山本草二先生の本に、ポルトガルとスペインしか関わっていない、トルデシャス条約は国際法とは言えない、と書いてあるを見て、そうだったのか、と思っていたが、山本先生、多分この条約を根拠に様々な条約が形成されて行くことをご存知なかったのでは?と思うようになった。

さて、ティドレのサルタンの話を読みながら思い出したのがシンガポールのラッフルズのことである。そこで「海の帝国」に書いてあったことを思い出して再読した。

ラッフルズはオランダ人のようにずる賢い華僑ではなく、マレー人と協定を結び海洋帝国を作ろうとしていた。ラッフルズの日常の業務を示した部分も興味深く、秘書だったアブデュラーが記録している。机の上に横になったりしながら終日サルタンへの手紙の内容を考え、翌日推敲する。手紙はいかに協力するか、という内容。私が毎日やっていることと似ているのだ。終日かけて世界中の知人、友人、その他への手紙というかシェアしたい情報をまとめている。そこから世界が、インド太平洋が動いていく・・・

しかし英国はラッフルズの思いを無視し、華僑との関係を重視するのだ。

今回再読して新たな発見があった。ラッフルズはアダム・スミスの自由主義を標榜していたのだ。そしてこのラッフルズ伝を1943年、戦争の真っ最中に書いて発禁を受けた日本人がいた。信夫清三郎。なんと後藤新平の本も書いているのだ。まさに宝を発見した感覚。