やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

樋口レポートとインド太平洋構想(3)

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昨日、10月4日のSNSはこの6カ国 日本🇯🇵、アメリカアメリカ国旗、イギリスイギリス国旗、オランダオランダ国旗、カナダカナダ国旗及びニュージーランドニュージーランド国旗 合同演習のツイートが多かった。

10月2日~3日、沖縄の南西地域での演習だという。まさに中共の海軍、海洋科学調査船などが活発な、第一列島線と第二列島線の挟んだ海域だ。

日本、米国(マリアナ諸島)ミクロネシア連邦、パラオ、フィリピンのEEZに囲まれた公海かもしれない。ここはパラオ九州海嶺もあり、海底資源の宝庫である。

 

話を樋口レポートに戻したい。これぞ日米同盟を基軸にした多角的安全保障であろう。同報告書を執筆された渡辺先生も、まさかここまでは想像していなかったであろう。樋口レポートのリベンジを誓い、ミクロネシア海洋安全保障をインド太平洋構想に、衛藤晟一議員の質問に応える形で繋げた私も、驚いている。

それだけ中国の脅威が認識され、インド太平洋の広大な海が無法地帯となっている事が認識されたのだと思う。

ここから数回にわけて、樋口レポートをきっかけに開始した「日米戦略対話」を実際に関わった秋山昌廣氏のご著書から紹介したい。手元にあるのは亜紀書房(2002年発行)である。

同書は四部から構成されている。1995年に20年ぶりに改正された防衛大綱以降は安全保障専門家にも記憶が残っていると思う。よって第一部の樋口レポートの関連の部分をまとめて行きたい。タイトルは「冷戦後に急展開 ー 安全保障再考」である。

やはり冷戦終結から話は開始する。1990年湾岸危機、1992年国連平和維持部隊のカンボジア派遣。そして1993年の自民党敗北と細川内閣発足と続く。2ヶ月の羽田内閣を経て自社さ連立の村山内閣が誕生し自衛隊合憲。防衛大綱作成が加速する。その防衛省責任者が秋山氏であり、参考にされたのが渡辺昭夫先生が1994年に書かれた「樋口レポート」である。

それはまさに沖縄南西海域で10月2−3日に演習が行われた「グローバルな多国間の安全保障」を優先した内容であった。