やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

AUKUSのAU(日本の豪州研究に懸念)

フランスの潜水艦受注中止を巡ってAUKUSという新しい軍事協力枠組みが議論されていた。

外務省らしからぬ、自らTWで情報を発信する山上大使が、

 「"USUKA "ではなく、"AUKUS" ー 日本では、この新しいパートナーシップを「US-UK-A」と呼ぶ傾向がありますが、本来は「A-UK-US」と呼ぶべきです。」 

23 September News from under the Southern Cross - Edition 35 AUKUS

https://www.au.emb-japan.go.jp/files/100237279.pdf

と指摘するように豪州の問題がほとんど無視されているのだ。緊急PodCafeを開催して要点を喋りまくったが、ここにも記録しておきたい。日本の豪州研究はほとんどないと言って良いであろう。

 

1 インド太平洋に面する豪州の地理 

豪州はインド洋、太平洋、そして南極海に囲まれている。インド洋研究と地域協力の議論が1980年代から開始している。当方が2008年にミクロネシア海洋安全保障を立ち上げた際に研究会にお招きした、故人Russel Trood上院議員が1980年代に本を出している。しかし豪州が動いても世界は動かないのだ。

2 親中の豪州

豪州は基本反日、親中だと思った方がよい。安倍ーモリソン(アボットもか)で劇的に変わったがそれでもこの「反日・親中」構造は普遍な部分がある。ダーウィン港リースで「あの」オバマ大統領に怒られたはターンブル首相だが、2016年とつい最近の事である。

3 豪州が死守したい南極利権

豪州がヒステリックに日本の捕鯨を反対した理由は南極利権である。南極大陸に申請した領土が作るEEZを、南極条約を無視して宣言している。ここで日本捕鯨船が活動していた。豪州が捕鯨の件でおとなしいのは、この南極で今中露が活発に活動しているから、と私は見ている。

4豪州はミドルパワーの国

国土も広く、態度もでかく、図体も大きいので誤解されやすが、豪州はミドルパワーの国である。G7には入っていない。人口は台湾と同じ2500万程度で、海岸線にちょぼちょぼと住んでいるだけである。豪州王立海軍は日本の海保と同じ13,000人程度。それだけではない。「質」が問題なのだ。

5 オランダ病

オランダ病とは資源が豊富で技術力が落ちる国家の現象を言う。まさに豪州はオランダ病を長らく患っている。私が2008年に海洋安全保障事業を始めた頃、豪州海軍は性犯罪組織としてメディアと国民に叩かれていた。被害者は同じ軍部の女性達だ。私は豪州の知人達から「気をつけなさいよ」と何度と言われたことか。これも背景に中国の経済開発がある。中国が欲したのは豪州の無尽の鉱山資源。鉱山産業が急成長し、大卒初任給が1千万円で、ベストアンドブライテストはみんな鉱山会社へ。残った問題児(?)が軍隊へ来る、と豪州国防省から聞かされた。人員が足りないだけではない。レベルが低いのだ。

5 オランダ病ー2

まさに潜水艦の話につながる。技術力が落ちた豪州は現在車も作っていない。30年以上前だがまだ車産業があった時豪州に1年ほど滞在したことがある。「新車は買うな、中古を買え。故障が直っている。」冗談ではなかった。日本では考えられない。軍船、潜水艦も作れない。ジョンソン国防相は「豪州造船界はカヌーも作れない」と言ってクビになってしまった。労働組合の国だ。政治力だけは強いのだ。

 

結論: こんなんで大丈夫か?という豪州の実態を英米は気づいている。だから米は日本に頼っている。英国は香港の件もありインド太平洋はブレクジットの、グローバルブリテンの優先地域となった。かつての大英帝国に戻ってきたのだ。しかしかつての植民地は独立している。豪州は同じ英連邦であり、同じ君主と同じ王立軍のトップ、エリザベス女王を迎えている。イギリス国民も多く住んでいる。

豪州のユニオンジャックは飾りじゃない。