やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

フランスのインド太平洋シリーズ・メガ海洋保護区の今(1)

France in the Indo Pacific-Marine Protected Area :IUCN

フランスのインド太平洋シリーズの7回目は英仏のインド太平洋のある領土、島がどういう状況かをまとめようと思った。そして欧州の小さな海域で漁業権の争奪戦をするより広いインド太平洋で漁業をしたら?と提案するつもりであった。

しかし、最後は気を変えて「海洋保護区の今」にしたい。

私の海洋への関心は、2008年に自分一人で立ち上げ推進してきたミクロネシアをめぐる、また日米豪の協力を巡った、海洋安全保障とこの海洋保護区にある。

具体的には笹川陽平が金の力で進めてしまった海洋保護区の修正がある。これをフランス国際問題研究所 ifirの支援依頼を当方が受けて、ニューカレドニアに本部があるSPCとの共催でオンラインセミナーまで漕ぎ着けた事は感慨深い。

その中で、はやり「絵に書いた餅」のメガ海洋保護区が世界的常識、認識として否定されていることだ。IUCNに下記の文書を見つけた。2012年の記述なので、パラオの海洋保護区が発案される以前からこの問題をIUCNは認識していたのだ。

When is a Marine Protected Area really a Marine Protected Area | IUCN

"It is time to stop pretending more of the ocean is protected than it actually is. Understanding what is protected in the ocean and how it is protected is of paramount importance in driving global conservation efforts forward,” says Dan Laffoley, Marine Vice-Chair of IUCN's World Commission on Protected Areas.

「今こそ、実際よりも多くの海洋が保護されているように装うことをやめるときです。海洋で何がどのように保護されているかを理解することは、世界の保護活動を前進させる上で最も重要です」と、IUCN世界保護地域委員会の海洋副委員長であるダン・ラフォリーは言う。

本来海洋国家の日本はパラオやキリバスのメガ海洋保護区を止めるか修正する形でアドバイスすべきだったのだ。財団内では周知だが、笹川陽平は一切海洋問題を理解していないのである。

IUCNの2012年のガイドラインはここにある。MPAの定義は2012年以降更新されていないのでこれがIUCNの最新の公式定義になるのであろう。機械訳をして貼っておく。

When is a Marine Protected Area really a Marine Protected Area | IUCN

 

IUCN は保護区を次のように定義している。

明確に定義された地理的空間であり、法的またはその他の効果的な手段により、関連する生態系サービスや文化的価値とともに、自然の長期的な保全を達成するために認識、専用、管理されるものである。
この定義は、6つの管理区分(1つは下位区分)により拡大され、以下に要約される。

Ia 厳しい自然保護区:生物多様性、および場合によっては地質学的・地形学的特徴を厳密に保護し、人間の訪問、利用、影響を管理・制限し、保護価値の保護を確実にするもの。

Ib 原生地域:通常、改変されていない、またはわずかに改変された大規模な地域であり、自然の特質と影響を保持し、恒常的または重要な人間の居住がなく、自然の状態を維持するために保護・管理されている。

II 国立公園:大規模な自然または自然に近い地域で、特徴的な種や生態系を持つ大規模な生態学的プロセスを保護し、環境的、文化的に適合した精神的、科学的、教育的、娯楽的、訪問者の機会を提供するもの。

III 天然記念物: 地形、海山、海底洞窟、洞窟などの地質学的特徴、または古代の木立などの生物学的特徴を含む特定の天然記念物を保護するために確保された地域。

IV 生息地/種管理地域:特定の種または生息地を保護するための地域であり、この優先順位を反映した 管理が行われる。多くは、特定の種または生息地のニーズを満たすために、定期的かつ積極的な介入を必要とするが、これはこのカテゴリの要件ではない。

V 保護された景観または海景。人間と自然の相互作用により、生態学的、生物学的、文化的、景観的に重要な価値を持つ明確な特徴が生み出されてきた場所:そしてこの相互作用の完全性を保護することが、その地域と関連する自然保護やその他の価値を保護し維持するために不可欠である場所

VI 生態系を保護する地域。
文化的価値や伝統的な自然資源管理システムとともに生態系を保護する地域。一般的に大規模で、主に自然状態
持続可能な自然資源管理のもとで、自然保護と両立する低レベルの非工業的な自然資源利用が主な目的の一つとされる地域。
保護区の少なくとも4分の3に適用されるべき主要な管理目的(75%ルール)に基づいたカテゴリーであること。

 

管理カテゴリーは、保護区に対する権限と責任を誰が持つかを示すガバナンスのタイプ分類とともに適用される。IUCNは4種類のガバナンスを定義している。

政府によるガバナンス:
連邦または国の省庁が担当、国の省庁が担当、政府が管理を委任(NGOなど)。

シェアードガバナンス :
共同管理(様々な影響力の度合い)、共同管理(多元的な管理委員会)、越境管理(国境を越えた様々なレベル

プライベートガバナンス :
個人所有者によるもの、非営利組織(NGO、大学、協同組合)によるもの、営利組織(個人または法人)によるもの

先住民族および地域社会によるガバナンス:
先住民の保護区および領土、地域社会の保護区 - 地域社会によって宣言され、運営されている。

IUCNの定義、カテゴリー、ガバナンスの種類に関する詳細は、www.iucn.org/pa_categories からダウンロードできる「保護区管理カテゴリー適用のための2008年ガイドライン」を参照。