やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

US Pacific Shift - US protect our fish?

 今回の米国出張は、パネッタ長官のシャングリラダイアローグやUNCLOSに関連するスピーチが実際にどのように太平洋の海洋安全保障に反映しているのか、いないのか、というクエスチョンを用意していた。

(以前クエスチョンを疑問と訳して書いたら、防衛大学の教授さんに「疑問」をネガティブな意味で理解されメールをいただいた。当方が漁業監視への軍事介入にネガティブな意見を持っていると誤解されたようなので、クエスチョンのままにしておきます。海軍の役割については後述。)

 このブログには断片的にしか書けないが、HSB&Iという監視制度に大きな動きがあったので書いておきたい。

 HSB&Iって知ってますか? High Sea Boarding & Inspection の頭文字である。

 誰のモノでもない公海の管理、というのがUNCLOSで確か唱われているハズである。(要確認)確か国際機関が、国際協力で行う、といような内容であった、と記憶しています。

 当方が米国に足を踏み入れたとたん、キャンベル国務次官補はまたアイランドホッピングの旅に出かけるし、米国沿岸警備隊は”新たに59隻”のHBS&Iの船舶をWCPFCに登録。米国の「太平洋シフト」ーここぞとばかりに見せつけられたような思いであった。

 面会相手はこの分野のプロである。当方が「へっ?」という顔をしていると、「しょうがねーなー」という表情でHSB&IがHigh Sea Boarding & Inspectionであること、つい数日前に米国が新たに59隻追加申請した事。しかもその船籍名はWCPFCのリストにあるけどどんな船か(海軍か沿岸警備隊か、マリーンか)名前だけなので一見わからないんだよ、と教えてくれた。太平洋のUSCGが所有する船舶は7−8隻しかない。つまり90%が軍の船舶である可能性もある。

 ホテルに戻ってウェッブで探すとありました。下記の表とグラフにまとめてみました。

 

HSBIWCPFCtable.png

HSBIECPFCgraph.png

Both table and Graph made by R. Hayakawa based of WCPFC website.

http://wcpfc.int/high-seas-boarding-inspection

これから勉強しなければならないクエスチョンズ。

1.HSB&Iとは何か。これはグリーンピースの花岡先生にお聞きしたい。多分WCPFCの事を日本で一番理解していらっしゃる方、だと思います。

2.公海の管理について。どうやら米国は公海でのお魚管理を口実にPacific Shiftをしている様子が見受けられる。

3.「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約」というのがあって、今のところ米国だけが署名しているのだそうだ。

4.上記の表とグラフを見ていただきたい。今回米国が申請した船が59隻。60日後誰からも文句がなければ59隻は行動可能となる。先に20隻が登録してあるので全部で79隻。全体の140隻中79隻というのは大きい。56%だ。

5.中国の船が一隻もない。なぜか?中国政府に聞け、と言われたのですが、もし中国政府の方、もしくは関係者がこのウェッブをご覧になったらご教示ください。

6.NZ豪、仏が船をたくさん出すのは理解できる。台湾の登録数がこの3カ国に並んでいる。なぜか?

7.日本はたった2隻。やっぱりお魚を守ろう、なんて意識はないのだろうか?水産庁次長 宮原正典氏はかつて監視船をパラオに出す案を持っていらしたが。

8−1。米国の太平洋シフトってお魚を守るって話かしら?それって軍事行動のための口実?それとも海軍のメタモルフォーゼ?

8−2。50対50が60対40の割合で米国の軍事力がシフトされる。でも太平洋に戦争の火種は今のとことないから海洋資源管理を口実にしているのでは?

8−3。それでクリントン長官とパネッタ長官が急にUNCLOS推進派になって「UNCLOSを批准すると儲かりまっせー。」と言い出したのだろうか?数年前にホワイトハウス主導で作成されたオーシャンポリシーの立役者、NOAAのルブチェンコ長官は干されているらしい。

8−4。漁業監視が口実ではない理由として海軍とは何か?というクエスチョンをどこかで議論しなければならない。かつて海軍は軍事だけでなく、外交、商務、法執行、科学(天文学から文化人類学まであらゆる分野)とマルチタレント軍団であった。フランシスドレイク等エリザベス女王の僕であった海賊もいる。(詳しくは拙著『ラテンアメリカオセアニア (世界政治叢書) 』をご参照ください。)海軍が軍事に特化したのはいつごろからであろう?

8−5。ポッセコミテタスが鍵。これを知っている日本人は多分数人しかいない。安全保障専門家なる人に聞いても誰も知らないのだ。違法操業取締で運行される船舶が軍隊のものである場合、この市民戦争(南北戦争)の遺産としてできた法律によって、必ず沿岸警備隊かNOAAの法執行官が乗船する事になっているそうである。

エスチョンズは尽きない。

このテーマは順次勉強し、逐次ブログにアップさせていただきますのでよろしくご指導、ご教示くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。