やしの実通信 by Dr Rieko Hayakawa

太平洋を渡り歩いて35年。島と海を国際政治、開発、海洋法の視点で見ていきます。

2016-01-01から1年間の記事一覧

ミクロネシアの移民問題

この問題も、パラオの大統領選を追いながら気になっていて、FBにはあげていたがブログに書けなかった。2016年最後のブログ。 米国と自由連合協定を締結するミクロネシア3国から米国、特にグアム、ハワイ等への移民が問題となっており、改善されるどころか悪…

満州事変に対する欧米の認識の違い

若き日のニミッツと東郷 『ニミッツの太平洋海戦史』(恒文社、昭和41年)に気になる記述があって、それを新渡戸と重ねてこの2日くらい考えている。 同書の一章は「日本の膨張期」というタイトルである。 その短い前文に書かれている事が新渡戸の亡くなる数…

ニミッツ司令官が示した日米の和解

安倍総理のハワイ訪問。 真珠湾の慰霊は「和解」reconciliation という言葉に象徴されるようだ。 一昨日前、私は、ペリリュー戦を率いた米軍チェスター・ニミッツ司令官の"The Great Sea War"の和訳本『ニミッツの太平洋海戦史』(恒文社、昭和41年)を手に…

『昭和の精神史』竹山道雄著作集1福武書店昭和58年

竹山道雄とBert Röling FBFの方から教えていただいた竹山道雄の『昭和の精神史』 ここに平泉澄の皇国史観を批判的且つ戦後の平泉の一貫した態度を評価している事が書かれている、ということであったので手にしたがその事は書いておらず、戦争になった背景と…

WCPFC - 太平洋島嶼国は遠洋漁業を知らない

昨晩あげたWCPFCに関する2つのニュースに多くのアクセスがあったので、これも確認のために書いておきたい。 ミクロネシアの海上保安事業を通して、太平洋島嶼国の水産業を知る機会を得た。 そこで改めて認識したのが、太平洋島嶼国は水産業を、遠洋漁業を自…

WCPFC - オブザーバーの安全確保

WCPFC総会のニュースになっていたもう一件が、オブザーバーの件である。 オブザーバーと言っても会議のオブザーバーではなく、漁船に同船する島嶼国が派遣した監視員の事である。彼等が亡くなったり、行方不明になったりしているので、安全対策をWCPFCで合意…

WCPFC - 違法漁船ベトナムのブルーボート

12月5−9日、フィジーで開催されたWCPFC総会で議論され、ニュースに取り上げられていたのが、通称ブルーボートと呼ばれる、違法漁船である。 昨年、パラオ海洋警察が海上で爆破しニュースになった。(ニュースにしたのは以前紹介した英国人イエロージャーナリ…

『近衛新体制 ー 大政翼賛会への道』伊藤隆著

私が近現代史を学ぼうと思ったのは、ミクロネシアと日本の関係を理解するには第一次世界大戦前後ははずせない、と今更のように反省した事と、2015年の天皇陛下のお言葉を知ったからである。 「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり…

アマルティア・センの学会に参加してー松浦氏からの回答

今年9月に参加したアマルティア・センの学会で経験した事を下記に書いたところ、お名前をあげさせていただいた松蔭大学 松浦広明氏から下記のコメントいただいた。 「あっ、本人です。その節はすいません。「ケイパビリティ原理主義」は、どちらかと言うと…

「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」渡邉昭夫(3)

沖縄の米軍基地を扱った渡辺先生の小論は沖縄と本土の心の対立から「日中の狭間の沖縄」に話しが展開する。 「領土問題と言えば、歴史に根拠があるとかないとかが問われがちだが、そもそも国境とか領土主義といった観念は近代の所産である。」 そうだ!この…

「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」渡邉昭夫(2)

渡辺先生からメールをいただいた時、当方が執筆した月刊正論の記事へのコメントをいただいた。 「アメリカは本当にミクロネシアを日本に返したがっているのだろうか?」 渡辺先生が「海外事情」2016年10月号特集に寄稿された論文の後半は米軍基地の事が書い…

自由が丘と私をつなぐものー教育

自由が丘を初めて訪ねた。 自由が丘の名前の由来は自由ヶ丘学園にある、とこれはwikiにあった。 もしそうであれば、自由が丘が私にとって特別場所である。 1928年、自由ヶ丘学園を創設した手塚岸衛が最初に自由教育を行ったのが千葉師範学校附属小学校。1919…

茗荷谷散策

写真の記録 新渡戸の足跡を訪ね茗荷谷を初めて訪ねた。 キリシタン屋敷跡など茗荷谷は歴史が残る町、のようだ。 最後は拓殖大学の後藤新平新渡戸稲造記念館へ。 その後、母校青学へ。 そういえばここもキリスト教の大学だった、と今頃のように思い出した。

「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」渡邉昭夫

「海外事情」2016年10月号特集「安全保障と沖縄」に渡辺昭夫先生が文章を書かれたので読んで感想を述べよとのメールを渡辺先生からいただいた。 「戦後70年の日米関係と沖縄、そして北東アジア」である。 調べたら「海外事情」は拓殖大学から発行され、郵送…

パラオのイエロージャーナリズム

新渡戸稲造は米国の反日感情を改善すべく、病気の体を推して訪米し亡くなったのである。 私の新渡戸の関心は植民政策で、日米関係ではない。 しかし、新渡戸の著作に日米関係が多く割かれている。 新渡戸が米国の反日原因にあげているのが、 1.宋美齢に象徴…

明治神宮開門

日文研主催の反日、反安倍集会に参加しなければ葦津珍彦著『国家神道とは何だったのか?』を読む事はなかったであろう。 オークランド大学のマリン教授が批判していた「神道」。感覚的にわかる。あれは何だったのだろう?戦前のファナティックでショーベニス…

八重山諸島への自衛隊配置(2)

日本記者クラブが自衛隊配置で揺れる、石垣、与那国の取材をしたという。 日経の編集委員坂本英二氏はバランスが取れていて、また以前より気になっていた与那国での自衛隊の受け入れがどうなっているのかも書かれている。 まずは、自衛隊施設に琉球瓦が使用…

八重山諸島への自衛隊配置

今年春から秋にかけ、パラオの大統領選を追いながら八重山諸島の自衛隊配備についてもパラオと同じ位、自分の中で気になり追っていた。 私は90年代半ばから「島と島を結ぶ」「島で島を語る」というコンセプトで奄美大島をきっかけに先島での事業を展開してき…

『台湾の歴史』 許文龍著

台湾のFBFから教えてもらった日本の台湾植民のはなし。 『台湾の歴史』 許文龍著 読了。 https://drive.google.com/file/d/1y2I34sWx9CGDHcnHi4heEo9oyJErbJGf/view?usp=sharing 参った。日本の植民政策を正当に理解しているのは台湾人だ。 この本を紹介して…

カジノと島嶼国

一度でいいからやってみたい。 なにやら世の中はカジノ法案で騒がしいようである。 カジノと言えば太平洋島嶼国である。 マネロンの、越境犯罪の温床となっている。 島嶼国の情報通信網はカジノのために発展した背景もある。 法律の緩い島嶼国では、世界のビ…

EEZのお魚は誰のモノ?

布施明さん、まだ御活躍でした!EEZを考えるときのバックグラウンドミュージックは「海をみつめて」にしよう! 今年9月、同志社大学の坂元教授から、パラオの80%商業漁業禁止の海洋保護区は国連海洋法条約、UNCLOSに反すると伺って、まだショックを受けて…

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第13回年次会合本日キックオフ!

Jemima Garrett記者のFBから、WCPFC開会式! 豚さんが!トンガで雅子妃殿下も召し上がれましたね。皮がパリパリで美味しいのよ。 今日から中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第13回年次会合がフィジーで開催される。 大勢のメディアがFBで、現場の議論をライ…

『国家神道とは何だったのか』 葦津珍彦著

日文研が主催した反日、反安倍集会、とでも呼びたいあの経験がなければ、オークランド大学のマーク・マリン教授の発表、政治的プロパガンダ発言を聞かなければ「国家神道」について読む機会はなかったであろう。 人生何が幸いするかわからない。 早速調べて…

WCPFCに参加するNGOs その2

前回はWCPFCに参加するNGOsについてWCPFC事務局が作成したレビューを紹介した。 12月5日からフィジーで開催されるWCPFC。NGO参加に関してもう一つ、下記のペーパーが International Environmental Law ProjectというNGOから提出されている。同プロジェクト…

フランスとBBNJ

A long and winding road - International discussions on the governance of marine biodiversity in areas beyond national jurisdiction, p.11, IDDRI から 世界第二位のEEZを保有するフランス。 そしてそのEEZの70%は太平洋にある領土で形成されている…

WCPFCに参加するNGOs

WCPFC - 中西部太平洋まぐろ類委員会 英語の正式名は長い。 Commission for the Conservation and Management of Highly Migratory Fish Stocks in the Western and Central Pacific Ocean 12月5日からフィジーで開催される第13回総会には44のNGOが参加…

太平洋の水産資源管理とNGOの役割

今月12月にフィジーで開催されるWCPFC第13回総会が熱い!暑い!そして厚い! まず目にしたのが、漁獲制限の煽りを受けて閉鎖を決定した米領サモアの缶詰工場の関連ニュース。 U.S. Fishing Fleet Prepares To Fight For Fishing Rights In Pacific American …

BBNJとは何か?太平洋島嶼国の議論(5)

前回のBBNJの議論から2週間程開いてしまった。 下記のBBNJと太平洋島嶼国の関連を議論した報告書。2015年6月、BBNJが国連決議される以前の太平洋島嶼国内での議論がわかる。進行中のBBNJ議論を理解する前提となるであろうから丁寧に押さえておきたい。 "Th…

月刊正論12月号、産経ウェッブに記事が掲載されました!

ミクロネシアの海上保安事業について書いた記事が、月刊正論12月号と産経ウェッブに掲載されました。 南洋の親日国パラオ、ミクロネシアにも中国の触手が… 早川理恵子 http://www.sankei.com/premium/news/161119/prm1611190012-n1.html

気候変動と島嶼国

<科学的に何が証明されたのか?> 気候変動の件で科学的な証明は確定したのだろうか?とブログに書いたら白川 修さんという見ず知らずの方から下記のコメントをいただいた。この場を借りてお礼申し上げたい。 「気候変動の科学性は1988年に世界気象機関と国…